2022年10月07日 1742号

【いのち、暮らしを破壊する岸田内閣打倒!/民主主義的社会主義へ〈MDS集会基調〉】

 民主主義的社会主義運動(MDS)は岸田内閣打倒を掲げ、各地で集会を開始した。その基調講演の要旨を掲載する(まとめは編集部)。

追い詰められる岸田

 岸田内閣の支持率が急落。朝日新聞によれば2週間で47%から41%に、不支持率が47%になり、支持率と逆転した(9/11)。国葬、統一教会問題対応への強い批判によるものである。

 安倍国葬に対する世論は大きく変化している。NHK調査(9/13)では、7月「国葬を評価する」49%「評価しない」38%であったが、9月にはそれぞれ32%、57%と逆転。国葬の説明に72%が納得していない。





 国葬には法的根拠がない。憲法14条「法の下の平等」に反する。弔意、黙とうを事実上強制し、憲法19条「思想及び良心の自由」の侵害をもたらす。学校での半旗掲揚、児童生徒への弔意強制は認められるものではない。

 国葬の意図は何か。安倍の功績をたたえたいという支配階級共通の意志だ。

 安倍は戦争法を制定し、自衛隊武力行使への道をつけた。金融緩和政策をとり、株価を吊り上げ、グローバル資本とその担い手に大きな利益をもたらした。消費税率を5%から10%に引き上げ、年金削減、医療費負担増を行い軍拡などの財源を確保した。

 支配階級とすれば安倍は高く評価できる人物であり、国葬がふさわしいとみたのであり、岸田は国葬を進めたのである。しかし生活を破壊されてきた市民から見れば「高く評価する」などありえないことであった。

 その安倍とカルト集団統一教会との癒着が明らかになり、ますます安倍への批判が高まった。国葬反対署名は4団体・個人で40万筆以上集まった。

軍拡 改憲 進める岸田

 岸田政権はウクライナ戦争を利用し、台湾有事を打ち出し、軍事費対GDP比1%を2%へと軍事力強化を進める。内閣官房参与・島田和久は「ロシアや中国、北朝鮮という『力の信奉者』に対して『力による現状変更は無理だ』と認識させる抑止力強化が死活的に重要となる」(読売9/8)とその必要性を説明する。

 防衛省の2023年度予算概算要求は過去最大の5兆5947億円。そもそも現在の財政状況で軍事費2倍化の財源があるわけがない。だが何としても軍備強化したいのがグローバル資本である。



 軍事力強化を国家の基本方針として貫徹しようとするのが改憲である。

 憲法9条を変え、緊急事態による民主的権利制限を実現することで、グローバル資本の要求する戦争、新自由主義路線の永続を狙っているのである。ウクライナ戦争以前に比べ軍事力強化について賛成派が増えた。特に公明、立憲民主、国民民主の議員の変化は激しい。

 しかし台湾有事対応が何をもたらすのかを沖縄県民は認識している。宮古島住民は「有事になれば真っ先に標的になるのに、私たちには逃げる場所も時間もない」と訴える。島外への避難に航空機なら381機、船なら114隻が必要で、現実的には不可能なのである(琉球新報6/20)。

 本土においても軍事力強化の意味するものは市民生活の破壊であることを明らかにしていかねばならない。

コロナ対策を放棄

 厚生労働省は事務連絡「With コロナの新たな段階への移行に向けた全数届出の見直しについて」を出し、全数把握をやめる方針を打ち出した(9/12)。コロナ対策からの撤退方針である。全数把握をやめることでコロナ被害を少なく見せ、医療費削減方針を貫くためである。

 第7波の重症者数は1日最大637人とピーク時の3分の1以下に減少しているにも関わらず、死者は8月だけで8661人と、過去最悪だった第6波を超えた(厚労省)。重症者は増えないのに連日300人前後が亡くなる事態になっている。

 こんな状況で全数把握をやめれば、自宅で容体が急変し重篤化から死亡するリスクは格段に高まる可能性があり、死者がますます増大することになる。

 政府はコロナを感染症の2類から5類に変更しようとしている。全数把握廃止はその第1歩である。5類にすることで検査費用、治療費用の政府全額負担がなくなる。政府厚労省は自宅療養という「医療崩壊」を引き起こしていながら、医療拡充策をとらなかった。軍拡路線をとる政府は医療拡充を絶対に回避したいため、コロナ対策をやめていこうとしているのである。

インフレ生活悪化 放置

 8月の消費者物価が2・8%上昇(前年同月比)。市民生活を直撃している。

 政府の対策を考慮しても家計負担増は年間7・8万円(みずほリサーチ&テクノロジーズ試算)。低所得者ほど負担増の割合が高く、年収1千万円以上の世帯の負担増が0・75%対し、300万円未満世帯では2・6%になる。

 この物価上昇は、ウクライナ戦争の経済制裁のため石油、天然ガスなどのエネルギー価格が急上昇したことと、政府、日銀による金融緩和政策の結果である。



 各国はインフレ対策で金利引き上げを行っている。日本は金利を据え置いたままだ。そのためアメリカとの金利差が大きくなり、円売りドル買いの動きが進んだ。半年で25円下がった。結果として輸入物価が上昇し、市民の負担が増えた。

 しかし、岸田のインフレ対策はお粗末極まりないものだった。住民税非課税世帯へ5万円給付とかガソリン、小麦にわずかばかりの「対策」を出しているだけである。市民生活を守るという根本が欠落している。

 なぜ岸田政権は市民生活改善の政策をとらないのか。
政策の根本にあるのはグローバル資本の利益のために軍拡、改憲、新自由主義政策を推進することにあるからだ。

 日本の財政は世界最悪である。その中で軍事費を2倍にするには、医療、社会福祉を徹底して削減しなければならない。金利引き上げは国債価格を下げ、国債費を急増させ、財政危機をさらに悪化させる。

 「円安誘導で潤うのは一部の業界だけで、生活者は痛みを被る犠牲者となる。多くの国民は対外的な購買力が著しくそがれ、生活が困窮させられている」(日経9/8)。トヨタは1ドル140円定着なら経常利益が4500億円増加する(日経9/12)。


展望は沖縄、「カジノ」

 日本社会を根底から変革しなければならない。その大きな展望を示したのが沖縄県知事選玉城デニーの勝利と大阪カジノ住民投票直接請求の成功である。

 台湾有事最前線で軍拡路線を拒否したことの意義は大きい。軍拡ではなく東アジアの平和を作り出す展望が大きく開けたのである。軍隊は市民を守らないという沖縄戦の教訓は生き続けている。

 また大阪カジノ住民投票請求署名運動の成功も改憲政党維新の支配を崩す展望を作り出した。自公維新の支配体制は市民が闘うことによって突き崩すことができるのである。

 国葬で窮地に追い込まれた岸田内閣を打倒しよう。グローバル資本を根底から規制し、民主主義的社会主義に前進しよう。
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS