2022年11月04日 1746号

【ルールなき原発再稼働・新増設 事故は当然の運転期間延長に 暴走する岸田政権】

 岸田政権の「ルールなき原発再稼働」路線がいよいよはっきりしてきた。エネルギー危機を煽り、市民を脅し、危険な最悪の政策の受け入れを迫るものだ。

危険なほど効果あり?

 ロシアの侵攻から8か月を迎えたウクライナでは、欧州最大のザポリージャ原発がロシアに占拠されたまま、砲撃や職員の拘束などが続いている。これらは原発を管理不能状態に追い込む危険なものだ。チェルノブイリ原発の10倍の規模を持つザポリージャ原発が攻撃で破壊された場合、欧州が全滅しかねない。

 こうした危険性は、ミサイル攻撃が日本の原発集中地域に向かう事態を想像すれば、全く無縁ではなくなる。しかし、岸田政権と原発推進勢力は、稼働中原発で同様の事態が起きた場合にどうするか問われても徹底的に無視して答えない。

 インターネットのニュース記事には、軍事緊張の扇動と一体で原発を守るため軍事力増強が必要≠ニのコメントがあふれる。

 岸田政権の軍事費2倍化政策を促進するには、今まで以上のさまざまな危機≠ェ必要だ。危険だからこそあえて原発を再稼働し、「原発防衛」を理由に軍事力強化を正当化する。そんな狙いさえ透けて見える。

 節電が必要なほどの電力逼迫(ひっぱく)は年間通じてわずか50時間程度(1739号参照)。そのために事故のリスクをおかしてまで原発を再稼働し、おびただしい甲状腺がん患者、避難者を再びつくり出すのは愚行のきわみである。

規制委無力化と迎合

 岸田は、電力危機の際、原子力規制委員会の審査に合格していなくても原発稼働を可能とする法改悪ももくろむ。福島原発事故の過酷な現実を踏まえればとうてい不十分な現行ルールさえ邪魔だと撤廃し、規制委も無力化するものだ。

 規制委はいわゆる「3条委員会」だ。名目上は環境省の外局だが、国家行政組織法第3条に基づき、高い政治的独立性を持つとされる。当時、民主党政権との協議で、3条委員会とすることに自公両党も合意した経緯がある。自分たちが参加して決めたルールさえ都合が悪くなれば投げ捨てる。

 電力逼迫時だけとの触れ込みだが、原発が出力調整できないのをいいことに、一度再稼働されれば「最大限活用」される。福島原発事故前の原子力ムラのでたらめさを見れば明らかだ。

 規制委自身も政府への迎合を強めている。原発の運転期間は原則40年とされ、運転延長は1回のみ20年。最大限でも60年だが、さらなる延長を視野に入れた議論の開始を10月5日の会合で確認した。

 1971年に1号機が稼働した福島第1原発は、40年目の2011年に事故を起こした。固定資産税の課税基準として財務省が制定した耐用年数は、原発以外の発電所が38年であるのに対し、原発は24年。現行の基準すら耐用年数の2〜3倍もの期間、原発運転を認める不当なものだが、仮に運転期間が80年に延長された場合、耐用年数の3・5倍もの期間、原発運転が認められることになる。

 ここまでくれば「原発事故は起きて当然」であり「今までの生活を維持したければ市民は黙って耐えよ」と受忍を迫るものだ。市民を巻き込んだ国の集団自殺政策≠ノ等しい。


抗議の声 政権打倒に

 当然ながら、この方針変更には強い抗議の声が上がっている。環境保護団体は、規制委の運転延長容認撤回を求める声明を出した。

 福島では、健康被害を訴える声は11年間、抑え込まれていたが、ついに甲状腺がんの若者が裁判に立ち上がった。汚染水放出には漁業者はじめ県民が反対している。3・11から11年、解決した問題など一つもない。

 このような状態でも原発再稼働、運転延長に突き進む岸田政権と原発政策を変えなければならない。

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