2022年11月04日 1746号

【給付切り下げ・負担増の介護保険改悪を阻止しよう 改悪反対の署名を全国で】

 軍事予算の大幅拡大のために社会保障費の削減が狙われている。特に、高齢者をターゲットにした年金削減、高齢者医療費負担増、介護保険改悪が進められており、反対運動はすべての市民の緊急課題だ。

 10月1日から後期高齢者医療の窓口負担が、一定以上の収入(単身では年間200万円以上)の人の負担額が1割から2割に倍増した。

 9月26日、社会保障審議会介護保険部会が開催され、2024年度の介護保険制度改定への検討が始まった。国は、早ければ今年中にも改定案を示し、来年の通常国会での成立を目指す。

 厚生労働省は、介護保険部会で「給付と負担に関する事項について」を議題とし、財政制度審議会等から「見直し」を指摘された7項目を検討課題として提案した。「給付と負担」の見直しとは、給付削減と負担増を利用者に押し付け、介護サービス利用抑制をねらうものだ。

介護全分野への攻撃

 改悪の問題点を整理しておこう。

☆1 利用抑制を招く利用料倍増の原則2割負担

 要介護1の人は、現行の1割負担では限度額一杯利用すれば、月1万6765円の自己負担。2割負担なら3万3530円となる。負担できなければデイサービスなどの利用回数を減らさざるを得ない。体を動かし、人と話す機会は減る。利用者の状態悪化を招く。

☆2 介護支援の切り捨て、利用者削減を狙う要介護1・2の介護保険外し

 2015年度、要支援の人の生活支援を介護保険からはずし、市町村の事業に移行した。今回は、要介護1・2を「軽度」と位置づけ、介護保険から外し市町村の事業に移行させる。

 掃除や料理などの生活支援は、資格のあるホームヘルパーでなく、研修を受けたボランティアなどの「素人」に頼る。そして報酬単価を下げる。要介護1・2は、決して国が言うような「軽度」ではない。要介護1・2には認知症の人も多く、専門的なケアを必要とする。「素人」では専門的な必要なケアは難しい。また、報酬単価引き下げは、多くの要介護1・2のケアを行う小規模事業所の収入悪化を招き事業継続を困難にする。行く所を失った人の状態は悪化する。

 要介護者の約6割は1・2であり、それを介護保険から外すことが目的だ。

☆3 利用者抑制をもたらすケアプランの有料化

 ケアマネジャーは、利用者の状態を考慮して必要な介護サービス利用計画(ケアプラン)を作成する。現在は全額公費負担である作成費用を有料化すれば、ケアプラン作成を依頼できない人も出てくる。サービスの入り口で利用者を減らすことが目的だ。

☆4 ほかにも検討されている給付抑制、負担増

 (1)現在40歳以上の被保険者(保険料を払う人)の年齢を下げてより多くの人から保険料を徴収する。

 (2)現在無料である特別養護老人ホーム等での大部屋の部屋代などの有料化。部屋代が払えず退所する人のケアは誰がするのか。

 (3)貸し付けの使用料1割負担の歩行用杖などを買い取り制の全額自己負担に変更。利用者の状態が変われば杖も変えなければならない。利用者は状態が変わるたびに杖の買い替えが必要となる。負担が増える。

 (4)補足給付(介護施設入所者の食費などの減免)対象者を減らすために預貯金保有限度額を切り下げる。

尊厳ある暮らしへ

 介護保険制度は、今でも誰もが尊厳ある暮らしをおくるには全く不十分。その上このような改悪を許せば、必要な人に必要な介護保障はますますできなくなる。

 根本的には介護保険に替わる全額公費負担の介護支援制度が必要だが、当面の緊急課題は改悪阻止だ。

 「尊厳ある暮らしを連絡会」や中央省庁要請などに取り組むZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、厚労省に対する「要介護者を切り捨てる介護保険改悪反対の署名」を呼びかけている。多くの署名を集め、市民の力で改悪を阻止しよう。

 署名用紙は https://zenko-peace.com/kaigo-shomei-2022 からダウンロードできる。オンライン署名も可能

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