2022年11月04日 1746号

【岸田首相の「統一教会」対応/「未来に向けて」で追及逃れ/癒着の全容を明らかにせよ】

 「私が責任を持って、未来に向けて問題を解決したい」。統一教会問題の対応について、岸田文雄首相は「未来」を強調する。宗教法人法にもとづく解散命令の請求に踏み切ることもありうる。だが、自分たちに都合が悪い「過去」を忘れてもらっては困る。

解散命令請求も

 岸田首相は衆院予算委員会が始まるタイミングで、宗教法人法にもとづく「質問権」行使のカードを切ってきた。宗教法人に法令違反などが疑われる場合、文部科学省や都道府県の職員が運営実態などについて報告を求めたり、質問することができるとの規定(第78条2)である。

 首相から調査の指示を受けた永岡桂子文部科学相は、年内の実施をめざすと言明した。調査結果や教団の対応次第で、裁判所への解散命令請求も視野に入る。裁判所が解散を命令すれば、税制上の優遇を得られる宗教法人格が剥奪される。

 もともと岸田首相は解散命令請求の検討自体に慎重だった。態度を一変させた最大の要因は内閣支持率の続落である。首相周辺の危機感は相当なもので、「解散命令請求が出来なければ政権が倒れる」との声も上がっている(10/20読売)。

 焦りのあらわれか、自身の答弁を一夜で翻す場面もあった。解散命令を請求できる要件の解釈を「民法の不法行為も入り得る」と修正したのである(10/19参院予算委)。「朝令暮改」というほかないが、体裁を気にしてはいられなくなったということだろう。

 一連の対応について「国会での追及を避けるため、『やっている感』の演出で時間稼ぎをしているだけ」との見方もある。たしかにそうだが、政府・自民党が統一教会を切り捨てることは十分ありうる。連中は権力の座を守るためなら、長年のパートナーであってもポイ捨てする。

教団と政策協定

 「大切なことは未来に向かって関係を絶つことだ」と岸田首相は強調する。その一方で、教団との関わりが特に深い安倍晋三元首相や細田博之衆院議長の調査は拒み続けている。未来志向と称して過去を隠蔽するつもりなのだ。

 安倍政権が得意とした歴史修正の手口そっくりの策動を許してはならない。教団との関係を絶つと言うなら、その前提として癒着の全容や政策への影響を自ら明らかにすべきだ。たとえば、自民党の国会議員数十人が教団の関連団体(世界平和連合など)と事実上の「政策協定」を結んでいた問題である。

 関連団体は国政選挙の際に「推薦確認書」への署名を自民党議員に求めていた。選挙支援の見返りとして教団側が掲げる政策への賛同を要求したのである。具体的には▽憲法改正、安全保障体制の強化▽家庭教育支援法と青少年健全育成基本法の制定▽同性婚合法化などの慎重な扱い▽「日韓トンネル」の推進▽共産主義勢力などの阻止―の5項目を上げている。

 しかも「平和大使協議会及び世界平和議員連合に入会するとともに、基本理念セミナーに参加する」ことへの同意も求めていた。つまり政策への取り組みと同時に、教団の広告塔になることが支援の条件になっていたというわけだ。

公安もズブズブ

 統一教会が食い込んできたのは自民党をはじめとする政治家だけではない。国家権力の中枢、特に公安部門にも浸透してきた。教祖・文鮮明が創設した政治団体・国際勝共連合と、警視庁公安部や公安調査庁との協力関係である。

 公安警察出身のセキュリティコンサルタント勝丸円覚はこう証言する。「安倍晋三元首相の銃撃事件が起こるまで、公安部や公安調査庁は時々勝共連合の関係者と接触して情報収集を続けていました」(10/15デイリー新潮)

 ある公安調査庁OBは、勝共連合の地方組織幹部が同庁の出先機関をよく訪れ、部署内に出入りしていたと話す。同庁職員が情報提供料として「金一封」を手渡す場面も見たという(団体の機関誌を定価を大幅に上回る金額で購入)。

 このOBが「なぜカルト集団と付き合うのか」と疑問を呈したところ、先輩にあたる職員から言い返されたという。「何をいうか! あの人たちは共産主義とたたかっている立派な人たちで、ウチにもよく協力してくれているんだ!」(8/17しんぶん赤旗)

 このように、統一教会は政権与党とズブズブの関係にあると同時に、公安警察等とも反共の仲間意識でつながっていた。霊感商法や高額献金といった不当な集金活動を続けてこられたのは、「身内」の目こぼしがあったからなのだ。

 政府・自民党は今国会でも統一教会問題の追及から逃げ回っている。そんな連中に「被害者救済」などできるはずがない。 (M)

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