2022年11月11日 1747号

【平和公園まつりで高校生演劇に初挑戦 「嫌だ!」と声を出せた高校生 「月桃の花」歌舞団 青島みのり】

 9月25日、川崎市中原平和公園野外音楽堂で「咲きほこれ笑顔!かがやけ未来!平和公園まつり」を行いました。

 公園で遊んでいた子どもたちや家族が太鼓の音を聞いて見に来てくれ、とてもにぎやかなイベントとなりました。地域の作業所にも宣伝を行い、子どもたちと一緒にエイサー体験教室など、楽しそうに参加してくれました。作業所から遊びに来た方はその後、エイサー練習にも参加し、つながりを作ることができました。

何度も話し合いを重ね

 今回、初挑戦となった高校生演劇を無事にやり切ることができ、ほっとしています。劇のタイトルは『沈黙の怪獣』。オリジナル作品で、内容は「学校に突然現れた、笑顔を食べてしまう怪獣とそれを支配する『沈黙の怪獣』を主人公たちが倒す」というものです。

 前回、3月に同公園で行ったまつりでは、不登校をテーマにした朗読劇で高校生たちに出演してもらいました。台本を持って演じる朗読劇とは違い、今回はセリフを覚えなくてはいけない、動きを覚えなくてはいけない、衣装や小道具を考え作らなくてはいけない―ということで、経験者がいない中、楽しくも慌ただしい準備期間となりました。

 シナリオはセリフ、演出、結末などをどうするか、高校生たちと何度も話し合い、決めました。特に高校生が普段の生活でどういった生きづらさを抱えているのかを聞き取り、できる限りシナリオに活かしました。ラストシーンのセリフは高校生自身に任せ、「僕は言いたいこと言って生きていくんだ!」という、キャラクターと自身を重ねた力強いセリフが私は印象に残っています。

思いを吐き出す

 公演終了後の感想交流会でも、児童養護施設で嫌な思いをしていることなど、自らの日々の生活の背景をお客さんの前で語った高校生もいます。他者に向け、自身の背景を語るのは簡単なことではありません。

 交流の中で印象に残っているのが、高校の分教室に通う子から「先生が生徒に対して『気持ち悪い』って言ってくるんです。これってやっぱりおかしいですか?」と聞かれたことです。

 話を聞いていくと、確かにその担任の先生は言葉や行動に誠実とは思えないエピソードが多々あり、「本当に嫌なんです。3年間担任、変わらないし」と思いを吐き出しました。親にも「あなたが悪いんじゃないの?」と一蹴され、その子は一人でこの問題を抱えていました。

 私自身も学校に居場所がなく行かずに日々を過ごしていましたが、家やフリースペースで気兼ねなく自分を出せる、そんな環境がありました。学校へ行っていても、こんなふうに悩みを打ち明けないまま孤独に過ごしている若者が多いんだなと改めて感じました。

「私はここにいます」

 元気いっぱいに先生の悪口を言ってスッキリして帰っていく子もいますし、家族が忙しくコミュニケーションが取れず一人の時間が多い子は趣味の話を楽しそうに話して帰っていきます。高校生たちからは、「私の声を聞いてください」―そんな言葉が聞こえるような、「私はここにいます」と訴えるような切実さを感じることがあります。

 世の中に対してなんだか言葉にはできない違和感を持った高校生たち。わからないなりに、それでも「嫌だ!」と声を出せた。きっと高校生たちの自信につながったと思います。若者が一歩踏み出せたまつりとして成功した、とうれしい気持ちでいます。

 歌舞団の新作ミュージカルへ向け、今後も高校生たちの声を大事に一緒に頑張っていきます!





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