2022年11月11日 1747号

【失敗ワクチンの次は万博/大阪を私物化する維新の会/東京五輪と同じ腐敗の構図】

 大阪府の吉村洋文知事が肩入れしてきた「大阪産コロナワクチン」の開発が失敗した。巨額の公費が無駄になったわけだが、大阪を牛耳る「維新の会」は全く反省していない。ワクチン開発の責任者を「大阪・関西万博」の要職に起用したのがその証拠だ。

吉村激推しも不発

 国産初の新型コロナウイルスワクチンを目指して治験を進めてきた医療新興企業アンジェスが開発を中止すると発表した。吉村知事が「オール大阪でやっていく」とアピールし、国から約75億円もの巨額支援を受けていた、あの「大阪産ワクチン」である。

 2020年4月の発表当初から「眉つばもの」と受け止める人は多かった。ネットでは「半年で実用化なんて無理」「どうせ維新の虚偽宣伝」「たこ焼きの成分が入っているんじゃないか(笑)」等々、さんざんな言われようだった。

 しかし維新の本拠地・大阪では、人気沸騰中の吉村知事が太鼓判を押したことで、かなりの期待を集めていた。今なお「チャレンジするのは良いこと」と擁護する人もいる。だから維新はつけあがり、ますます大阪を食いものにする。

顧問先企業を優遇

 実例を示そう。アンジェスの創業者は森下竜一・大阪大寄付講座教授だ。彼は安倍晋三元首相の「ゴルフ仲間」として知られ、第二次安倍政権では内閣官房に設置された「健康・医療戦略室」の参与に起用された。大阪府・大阪市の特別顧問も務めている。

 その森下教授が昨年2月、「2025年大阪・関西万博」の重要ポストである大阪パビリオン推進委員会の総合プロデューサーに就任した。同委員会の会長は吉村知事だ。絵に描いたような「おともだち人事」というほかない。

 そして今、「東京五輪汚職」と同じ構図の疑惑が浮上している。総合プロデューサーは万博パビリオンに出展する協賛企業の選定を取り仕切るポジションなのだが、森下教授がその立場を利用し、多額の顧問料を得ている企業を万博の最高位スポンサーに押し込んだというのである。

 くだんの企業は浄水器販売の「サイエンス」。高級シャワーヘッドのテレビCMで知られる新興企業だが、他の最高位スポンサー(日本生命とロート製薬の2社)と比べると企業規模が全然違う。有力者の猛プッシュがなければ、ありえない選定といえよう。

 また、ジャーナリストの森功のレポート(週刊現代10月29日号)によれば、万博パビリオンの跡地には森下教授と親しい錦秀会グループの病院が入ることになっていたという。この一件は錦秀会の理事長(彼も安倍元首相の友人)が日大背任事件で逮捕されたことでおじゃんになった。

膨れ上がる費用

 このように、大阪・関西万博は維新のお仲間やアベ友たちの利権漁りの場と化している。東京五輪と同じで、特定企業のためのカネ儲けの祭典なのだ。

 東京五輪と同じと言えば、開催費用や公費負担の増大という問題がある。万博会場の建設費用は計画当初の1・5倍、1850億円に膨れ上がっている。このうち大阪府・市の負担は616億円だが、円安や資材高騰の影響もあり、さらに増える可能性がある。

 事実、地元館「大阪パビリオン」の建設費用は当初想定の73億6300万円を大きく上回る115億円に達する見通しで、うち111億円を府市で折半する。その補正予算案が府議会・市議会で可決された。

 まだある。会場へのシャトルバス専用道として大阪市が整備している「淀川左岸線」は軟弱地盤の改良工事に時間と費用がかかり、総工費は当初計画より1800億円増の2900億円になる見通しだ。地下鉄の延伸にかかる整備費も250億円から346億円に上方修正された。

 万博会場となる人工島・夢洲全体の整備費(液状化や土壌汚染の対策費)は、大阪市の試算で1578億円に達する(府市が誘致を目指すカジノ・IRの用地分も含む)。まさに、底なし沼に金塊を投げ入れているような状態なのだ。

 そもそも夢洲での万博開催は、当時の府知事である松井一郎(現大阪市長)のトップダウンで決めたものだ。カジノ候補地である夢洲のインフラ整備に巨額の税金を投入するためには、「万博」という大義名分が必要だったのである。

 万博はしょせん半年間のお祭りにすぎない。一過性のカネが一部の企業に落ちるだけだということは、東京五輪の無残な結果が証明している。後に残るのは、住民の莫大な税負担だ。そもそも万博やバクチ場(カジノ)が「関西経済の起爆剤」になるという発想が間違っている。それは維新というペテン師が振りまく幻想にすぎない。

 (M)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS