2022年11月11日 1747号

【読書室/自民党の統一教会汚染 追跡3000日/鈴木エイト著 小学館 1600円(税込1760円)/事実で暴く、いびつな共存関係】

 統一教会をめぐる話題がテレビ番組を連日にぎわせている。関係者によると、教団と自民党議員の癒着について「ネタ切れ」にならないのは著者の存在が大きいと言う。実際、初期報道の大半は、著者が独自取材で発掘した「動かぬ証拠」にもとづいていた。

 本書は、第二次安倍政権発足から今日に至るまでの自民党と統一教会の「緊密関係」を時系列に沿って検証したものだ。政権サイドの主役が安倍元首相だとすると、それを支えたのが首相官邸の主として君臨した菅義偉元首相だった。

 本書では政治家たちとの攻防も赤裸々に記されている。直撃取材の現場では警察に通報されて逮捕寸前になり(呼んだのは「マザームーン」発言で有名になった山本朋広衆院議員)、自民党顧問弁護団が関わった政治告訴まで受けた。

 教団からは要注意人物としてマークされ、顔写真入りの手配書が全国の関連施設に貼り出された。著者にとって発表の場である週刊誌やニュースサイトにもクレームが頻繁に入った。恫喝訴訟を仕掛けられ、連載記事の書籍化が取りやめになったこともある。

 メディアが統一教会の問題に触れなくなった背景には、自民党議員への忖度や教団の圧力に屈した「自主規制」があると著者は言う。霊感商法や高額献金などの被害を拡大させた原因はメディアにもあるのだ。

 「信者の人権を無視してその人生を奪う教団も問題だが、その信者を私利私欲のために使い捨てにする政治家は更に問題視されるべきだ」。著者は本書をこう結んでいる。統一教会の問題を追及するにあたり、決して忘れてはならない視点と言えよう。   (O)
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