2022年11月18日 1748号

【ミリタリー/朝鮮のミサイル報道で番組占拠 戦争協力体制へ進むメディア】

 この間、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)のミサイル発射が頻発している。10月4日には弾道ミサイルを発射し、青森県の上空1000`を通過、岩手県釜石市の東約3200`の太平洋上に落下した。ミサイルの日本上空通過は約5年ぶり7回目で、以降も弾道ミサイル発射が連続。「先軍政治」の愚劣さが際立つ朝鮮政府の愚挙である。

 他方、大規模な合同軍事演習で挑発し、朝鮮政府がミサイル発射するよう仕向けた日米韓政府の罪も大きい。とくに日本政府は事態を最大限に利用している。

 5年前と同様、10月4日、政府は「領土・領海・領空」の通過時、通過後に「Jアラート(全国瞬時警報システム)」による避難の呼びかけを行った。11月3日にも、はるか離れた日本海上でレーダーから消失したが、「Jアラート」を発した。多くの誤報や数々の失態、混乱を重ねながら、「有事近し」「北朝鮮は恐ろしい」キャンペーンを大々的に行っている。

 Jアラート発令からテレビをはじめメディアは「北朝鮮ミサイル発射」ネタに占拠≠ウれた。NHKはもちろん民放も同じ報道を延々と繰り返す。実際には何の被害もないのに、これほどの過剰報道を異常と感じない(感じていても何も言わない)メディアの劣化は目を覆うばかりだ。

国民保護法の「責務」

 さらに深刻な問題も浮かび上がっている。民放を含めて多くの民間事業者が戦争協力体制に組み入れられていることだ。主要な放送事業者はすでに2004年、有事法(武力攻撃事態法)に基づき、「国民保護」の口実で戦争協力が「責務」とされる「指定公共機関」に指定されている。

 たった数秒間の上空(領空とされる100`前後の10倍1000`というはるか宇宙空間)通過にもかかわらず、「指定公共機関」の各局が数時間にわたってこのネタで放送を続けた理由は政府への忖度(そんたく)だけではない。法的「責務」の圧力に屈した結果ではないか。

 国民保護法は、指定公共機関とされた放送事業者などが「速やかに、その内容を放送しなければならない」とする。実施内容や方法は各放送機関の「業務計画で定めるところ」による。

 例えば、TBSの業務計画は「これらの放送の実施にあたっては、その内容が迅速に伝達され、正確に理解されるような形式と方法を、市民の立場に立った自律的、自主的な判断により決定する」とある。だが、当日放送された内容は「市民の立場に立った自律的、自主的な判断」とはかけ離れたものだった。一つひとつ批判し、警鐘を鳴らすことをを怠ってはならない。

 戦争協力社会の完成を許してはならない。

 豆多 敏紀
 平和と生活をむすぶ会
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