2022年11月18日 1748号

【みるよむ(639) 2022年11月5日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの現実の光と影−観光宣伝で覆い隠された現実−】

 イラクでも最近外国からの観光客が増加している。政府や企業はイラクの「明るい」イメージを売り込んでいる。しかし現実はどうか。2022年9月、サナテレビが華やかな観光地の裏側にある現実を伝えた。

 映像の冒頭は1980年代に100万人もの犠牲者を出したイラン・イラク戦争の「殉教者記念碑」だ。しかし、この「記念碑」の裏面はイラン系イスラム主義勢力に破壊されており、政府は犠牲者の追悼碑さえまともに管理できていない。

 外国人観光客を呼び寄せるキャンペーン映像も登場する。出演する人びとは「戦争を乗り越えた」と言い、「軍隊と検問所ばかりだと思っていた」が軍人から贈り物をもらって「とても素晴らしい」と喜ぶ。バグダッドの5つ星ホテルに泊まる観光客は、きれいに整えられた観光地や豪華な料理に「寛大でもてなし好きで、親切なイラク人に歓迎される」とアピールする。

映像が暴く真実

 サナテレビのレポーターの説明は違う。「観光客は、アルコールを携帯しても責任を問われず、自由に移動し、写真を撮っても治安当局が認める」。一方、イラク市民は「自由に移動できず、アルコールを飲んだだけで治安部隊に逮捕される。女性は夜の10時を過ぎると外出できない。セクハラや場合によっては性的暴行にさらされる」。「観光客は社会サービスの欠如や貧困な生活環境に苦しむ貧しい民衆の地域には行きません」と批判する。

 南部バスラ州を訪れたフランス人観光客は、見かねて、地域を自主的に清掃した。「イラクで最も汚れている所」だと表現する人もいる。クウェート人観光客も、バスラの川の土手の修理を行った。非常に汚れた用水路が映し出される。「これは用水路です、とても臭いにおいがします」という声が聞こえる。

 サナテレビはイラクの社会の影の現実を伝えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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