2023年02月10日 1759号

【まやかしの「少子化対策」/誰も信じない岸田「異次元の挑戦」/軍拡財源へ消費税増税の呼び水】

 タレントの藤田ニコルが岸田文雄首相の「少子化政策」を一刀両断した。1月4日の年頭会見で岸田は、少子化対策について「若い世代から、ようやく政府が本気になったと思っていただける」と語った。藤田は「この言葉を聞いた時に『えっ?』ってなっちゃって。今まで本気じゃなかったんだって絶望しちゃったというか…」と述べる。さらに、岸田が財源問題にふれなかったことに、「いいことばっかりでみんなうれしいねってなってるけど、その裏で動いていることがなんか嫌だな」と問題のありどころを見抜いたのだ。

「期待できない」73%

 1月23日の施政方針演説で岸田は、少子化問題を「待ったなしの先送りの許されない課題」―最重要政策と強調した。より本音を語っている年頭会見では、「異次元の少子化対策に挑戦し…大胆に検討を進めてもらいます」。「異次元」「挑戦」「大胆」と言葉を重ねるが、要は「検討を進める」だけである。

 少子化対策は30年前から叫ばれてきた。打ち出された諸策に効果はなく、少子化に歯止めはかからない。その総括もせずに、いまさら何をいっているのか。



 岸田が「異次元の少子化対策」などと大げさな表現を使えば使うほど、人びとの気持ちは離れていく。朝日新聞の調査(1/21〜1/22)でも「期待できない」が73%に達している。

 1月19日に少子化対策の会議が持たれ、岸田は児童手当拡充を最優先課題に位置付けた。対象年齢の引き上げと手当の増額には2〜3兆円規模の財源が必要となる。ところが、岸田は「(子ども予算の)倍増、倍増と言われるが、来年とかじゃなくて、あくまで将来の倍増だ」(1/20朝日)と自民党幹部に漏らしていた。財源の裏付けなしで拡充を強調するのはまやかしである。

雇用と賃金の保障

 これまでの少子化対策がうまくいかなかったのはなぜか。根本的な原因は、非正規の低賃金労働者が急増したことによる生活基盤の不安定化である。

 現在、労働者の5人に2人は非正規雇用だ。労働法制の規制緩和がこの状態を作ってしまった。出産から子育て、教育には、安定した生活がなければならないにもかかわらず、歴代政権は非正規化を拡大し不安定な雇用環境を作り出した。根本的な解決のためには、まず、この状態の解消から始めなければならない。

 出産・子育て環境の整備や手当支給、教育無償化などはもちろん必要だが、人間らしく生活できる雇用と賃金の保障という土台があってはじめて解決への道筋として活きてくる。

結局 増税の口実

 岸田が少子化対策の財源にふれないのは、軍事費増ですでに増税を打ち出し、現時点ではさらなる増税が世論に受け入れられないと判断しているためだ。

 政権は、少子化対策キャンペーンを先行させ、増税やむなし≠フ状況を作り出した上で、頃合いをはかって消費税増税を打ち出そうと狙っている。

 岸田年頭会見後に、甘利前自民党幹事長が少子化対策財源として消費税をあげたように、消費税増税は既定方針であろう。その場合、消費税法第1条「年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」の規定を悪用しようとすることは間違いない。

 岸田政権が狙うのは、少子化対策を看板にして政権浮揚と消費税増税への道を開くことなのだ。そして、消費税増税分の多くを軍事費に回すことにある。少子化対策は、軍事費増と併走している。

 生活基盤の安定には、働き続けられる雇用の確保と生活できる賃金の保障が不可欠だ。その条件整備こそが真の少子化対策となる。
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