2023年02月10日 1759号

【DSAニックのアメリカレポート 「エベレット虐殺」106年 歴史は闘いを通して創る IWWが記念式】

 1916年11月5日、米北西部ワシントン州の都市エベレットで、12人の労働者が政府の弾圧によって殺された。昨年11月、私は「エべレット虐殺」の記念式を訪れた。主催はIWW(Industrial Workers of the World=世界産業労働組合)。IWWは、すべての労働者が一つの労働組合のもとに団結することによって資本主義体制に立ち向かうことを目指し、100年以上にわたってアメリカを中心に活動を行っている。

共に闘い命失った12人

 1916年、危険な職場で長時間労働をさせられていた木材工場の労働者たちは、労働条件の改善を求め、ストライキを行っていた。彼らと連帯し、IWWに所属する労働者たち(通称「ウォブリー」)は、エベレットの路上で声を上げ、一つの大きな労働組合のもとですべての労働者が団結する必要を訴えていた。しかし、エベレット警察はウォブリーたちを暴力的に弾圧し、逮捕した。

 IWWは、表現の自由を訴え、警察の弾圧に反対する集会を11月5日に予定した。当日、約50キロも離れたシアトルから、300人近くのウォブリーが蒸気船でエベレットに向かった。港に着くと、待ち受けていたのはエベレット保安官と200人の武装集団だった。

 保安官は、地元の資本家に警察代行≠任せ、暴力的に労働者の闘いを潰そうとしたのだ。「お前たちのリーダーはだれだ?」と問いかけた保安官に対し、一人のウォブリーは叫んだ。「私たちはみなリーダーだ!」。武装集団は、蒸気船に向かって発砲し始めた。12人のウォブリーが命を奪われ、27人がけがをした。彼らは、知らない労働者と共に闘うためにエベレットに向かい、命を失った。

今 闘うのも同じだ

 虐殺から106年。私たちは、殺された労働者一人一人の名前を読み上げ、事件が起きた場所にリースを飾った。参加者は歴史を語り、詩や演説を読み、みんなで『連帯は永遠だ』などの歌を歌った。

 IWWエベレット支部のオースティン書記・会計担当は、記念式を行う意義は「私たちがどこから来たか、思い出すためだ」と語る。「20世紀の初めごろと比べて、現在の暮らしはとてもよくなっている。それは、IWWや他の労働組合が、私たちの状態を改善するために闘ったからだ」

 しかし、労働者が勝ち取った進歩も、現在は脅かされている。「私たちが今闘わなければ、100年前の状態に戻ってしまう。私たちが今も闘っているのは、100年前と同じ闘いだ」

諦めず 連帯を心に

 記念式に参加して、私は歴史の重みを感じた。

 歴史とは、傍観者としてただ観るものではなく、私たち一人一人が、闘争を通して創るものなのだ。私たちは常に歴史を学び、過去の闘いから教訓を学ばなければならない。106年前、他の労働者と連帯してエベレットで闘ったウォブリーからは何を学べるか?

 オースティンさんは述べる。「自分に直接影響がないように見えても、他の労働者のために立ち上がらなければならない。私たちは、諦めず、連帯を心に留(とど)めなければならない」。彼らの遺志を受け継ぎ、私たちも闘い続けなければならない。





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