2023年04月07日 1767号
【沖縄/南西諸島7島17か所で市民の抵抗続く/「台湾有事」の戦争準備許さない】
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沖縄を含む南西諸島で自衛隊ミサイル基地建設と日米軍事一体化が強行されている。米軍と自衛隊による「台湾有事」を想定した危険な合同訓練、基地の「強靭化」や建設に、島々の市民は抵抗を続けている。
馬毛島から奄美 沖縄島
鹿児島県種子島の沖合にある馬毛島(まげしま)では、米軍空母艦載機離発着訓練FCLP施設建設が強行され、地元自治体である西之表市長の建設容認を糺(ただ)すリコール運動が展開された。
陸海空すべての自衛隊駐屯地と弾薬庫がほぼ完成する奄美大島では、自然破壊と、米軍とのキーン・ソード23など相次ぐ日米統合演習に市民の抗議行動や環境保全の闘いが粘り強く続く。
沖縄島。北部やんばるでは、北部訓練場の米軍車両を実力で阻止する蝶類研究者アキノ隊員=i宮城秋乃さん)の闘い。高江N1ゲート前テントでも連日監視行動が続いている。辺野古新基地建設阻止へ、名護市安和(あわ)桟橋や本部町塩川港では牛歩で土砂搬出を減らす過酷な闘いが昼夜展開されている。辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前では、1日3度の座り込み行動と新たな第4ゲートでの弾薬庫や美謝(みじゃ)川切り替え工事への監視行動。また、辺野古ぶるー≠ネどカヌーチームは、大浦湾、安和、塩川など広域で土砂搬送船の監視行動を続ける。
2月からの日米共同訓練アイアン・フィスト23では、辺野古に近い宜野座村松田の潟原(かたばる)に陸上自衛隊の水陸両用車AAV7が6台で上陸訓練。金武(きん)町の米軍ブルービーチでも、陸自ホーバークラフトLCAC揚陸艇の上陸訓練が展開され、うるま市の津堅島沖では危険な米軍のパラシュート降下訓練が行われた。保守系市議は、この様子を「オリオン座みたいでロマンチック」と語り、住民の顰蹙(ひんしゅく)を買った。
すぐ近くの陸自勝連駐屯地には、ミサイル部隊新設が計画され、周囲の保安林を防衛局が違法に伐採している疑いも。眼下には、米海軍ホワイトビーチが広がる。この地域は、近隣の与勝高校の生徒らによる沖縄に古くから伝わる伝統芸能・組踊の現代版「肝高(きむたか)の阿麻和利(あまわり)」で脚光を浴びた所だが、今や戦争の匂いが漂う場所に変貌した。
米空軍嘉手納基地や米海兵隊普天間基地では、40年以上にわたって地域住民が「静かな夜を返せ」と爆音差止訴訟。ピースアクションやキリスト者によるゴスペルで抗議の声を上げている。米軍機部品が落下した保育園や周辺小学校は今も子どもたちが危険にさらされ、有害物質PFAS(有機フッ素化合物)の流出汚染に抗議するスタンディング行動も新たに始まった。
宮古 石垣 与那国島まで
宮古島は、野原の空自レーダー基地、千代田の陸自ミサイル駐屯地、保良(ぼら)の弾薬庫など住民は危険と隣り合わせで暮らさざるを得ない状況となり、ゲート前で抗議行動が続いている。
3月16日開設された石垣島平得大俣(ひらえおおまた)の陸自ミサイル駐屯地では、開所後の22日に住民説明会開催と順序が全く逆。「既成事実づくりだ」と市民らは反発した。於茂登岳(おもとだけ)麓の陸自施設は、戦時中、旧日本軍が飛行場とともに「慰安所」をつくった場所に近い。島々に自衛隊施設が開設されると「かつての『慰安所』のように各地で風俗店が激増する」と懸念する声まで上がっている。
竹富町には、西表島(いりおもてじま)など9つの島がある。米軍の計画では、これらの島々も「台湾有事」の際に攻撃拠点とすることが検討されている。竹富町は沖縄で最初に無防備地域宣言運動が取り組まれた自治体だ。
そして台湾から110`の与那国島。監視部隊のレーダー基地には「容認」だった住民の中からも、ミサイル部隊の新計画に異を唱える人たちが出てきている。
43兆円にのぼる軍事費は沖縄・南西諸島に集中的に投入され、先制攻撃できる長距離ミサイル配備まで狙う。「台湾有事」の戦争準備ではなく、平和外交で戦争をくい止めようと島々で市民は抗っている。本土からの連帯闘争が求められる。
(西岡信之 元沖縄国際大学・平和学担当非常勤講師)
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