2023年04月07日 1767号
【イギリス 賃上げへ数十万人がストライキ 社会を動かしているのは労働者だ】
|
昨秋以降、交通や医療など公共部門のストライキが広がる英国で2月1日、新たに教員や公務員の組合が加わり、過去十数年で最大となる約50万人のストが行われた。英国では昨年後半からインフレ率が10%を超え、市民生活を圧迫。賃上げを求める公共部門のストは拡大の一途だ。
3月15日にも、地下鉄の職員、教員、医師のほか、公共放送BBCの職員など数十万人が大規模なストライキに突入。ロンドン中心部では、約4万人の教員らが賃上げと教育予算拡充を求めてデモ行進した。参加した教員は「私たちは適正な賃金を得ていません。インフレ率に見合った額が支払われていません。政府が教育予算を減らしているため、学校ではのりも足らないんです」と批判する。
要求も交渉も拒む政府
ところが、英国政府は、新たな予算案に要求に応える賃上げについては盛り込まなかった。さらに1月10日、議会に保守党が「反ストライキ法案」を提出した。この法案は、経済主要部門でのストライキの際、最低水準のサービスを提供する義務を課し、雇用主がスト参加者や組合に損害賠償請求することを認めるものだ。最初の取締対象を、鉄道部門や、救急隊員、消防・レスキュー隊員のストとし、その後、運輸、医療、教育部門などすべてに適用することを狙う。
政府は組合などとの交渉に応じておらず、ストは継続する。新たに消防士のストも予定されている。市民生活に混乱を与えるストライキだが、世論は共感を示している。オブザーバー紙の1月調査では、看護師のストに約6割が「支持する」と答えた。
英国では、経済の低迷、物価高騰で貧困化が急拡大し、貧困層(所得中央値の60%未満)は1600万人(人口の24%)を超える。人びとの間では「heat or eat(暖房をとるか、食べることをとるか)」と、暖房費を払うために食事を抜いたり、減らしたりすることが一般的といわれる。それでも新自由主義的緊縮政策を継続するスナク政権への激しい抗議とともに、あらゆる業種で同時多発的にストライキが行われている。
初の看護師10万人スト
昨年末には、コロナ禍で医療を支えた公共医療サービス(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会(RCN)」が史上初のストに踏み切り、全国で10万人の看護師が賃上げを求めて断続的にストライキを実行してきた。
コロナ禍で過重な負担となった医療現場では、長年の低賃金に加え、慢性的な看護師不足による基準配置人数以下での勤務が続いてきた。さらにサービス残業の強要、医療を受けられない患者からのクレームの殺到など矛盾が顕在化。看護師たちは適正な医療が継続できる体制と待遇改善を求め、インフレ率に見合う賃上げを要求し史上初の10万人ストライキへと発展した。
この闘いの前に英国政府は3月17日、NHSの100万人以上の医療従事者に対し5%の賃上げと一時金支給を提案した。組合員投票でその是非を問う段階だ。
英国を席巻するストライキやデモは、反ストライキ法成立をもくろむ保守党政権、労使交渉を拒む資本と対峙する何百万人もの労働者の決意の表明である。
英国ではこの状況をとらえて、労働者階級が戻ってきた≠ニ言われている。ストを通じて、労働者階級は、社会を動かしているのが自分たちであり、資本の勝手放題の経済をストップさせる力が自分たちにあることを認識する。ストライキが労働者を強くするのだ。
* * *
英国同様、米国も昨年はストライキや組合結成が急増し、ニューヨーク市ではウーバー運転手を含むギグワーカーらが24時間ストを打ちぬいた。スペインでも、アマゾンの倉庫で働く労働者が閉鎖反対のストライキに立ち上がっている。
2023春闘では、日本でも非正規労働者のストライキが行われようとしている。ストライキで賃上げを勝ち取り社会を変えよう。
|
|