2023年04月07日 1767号

【正念場迎えた原発裁判/立ち上がる避難者・被害者を支援しよう/ZENKO 福島と全国を結ぶつどい】

 3月21日、「福島と全国を結ぶつどい」(ZENKO<平和と民主主義をめざす全国交歓会>反原発実行委員会主催)が東京・大阪をメイン会場にオンラインで結び開催された。

 関電前プロジェクト秋野恭子さんがあいさつ。昨年6月17日の国の責任を否定した最高裁不当判決以降、「東電刑事裁判」(1/18東京高裁)「子ども脱被ばく裁判」(2/1仙台高裁)「いわき市民訴訟」(3/10仙台高裁)と控訴審で不当判決、政治的判決が増えている。苦しみから立ち上がる避難者・被害者の闘いを交流し、支援しようと呼びかけた。

 以下、つどいの柱となった3人の報告を紹介する。

なかったことにさせない/子ども甲状腺がん裁判支援を/郡山市・黒田節子さん

 1月25日、子ども甲状腺がん裁判弁論で、原告7の女性から、5度目の甲状腺検査でがんが見つかり手術したつらい体験、裁判に立ち上がった決意の陳述を聞いた。「他に苦しむ人がいる。今、立ち上がらなければ」「真実を明らかにするためここにいる」の思いが原告7人に共通する。

 UNSCEAR(アンスケア 原子放射線の影響に関する国連科学委員会)は、甲状腺がんと被ばくの因果関係を否定するが、原因確率は9割と極めて高い。

 汚染水海洋放出PR事業に300億円、浜通りを軍事研究の拠点化するイノベーション・コースト構想、原発政策大転換(大後退)に、10年間総額150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)方針閣議決定など札束で頬を叩く。

 タンク保管スペースはあり大タンクで代替できるのに、集めた放射性物質(汚染水)を海に流す。DVDで紹介した、代々、海を守ってきた漁師の小野春雄さんの怒りはパワフルだ。諦めず声をあげよう。

占有権限あるのに追い出す/「はめられたのは明白だ」/原発避難者の住宅追い出しを許さない会代表 熊本美彌子さん

 黒人ボクサーの冤罪(えんざい)事件を歌にしたボブ・ディランの曲『ハリケーン』に表題とした一節がある。避難者は誰にはめられたのか。

 福島県生活拠点課による2020年2月10日付「復命書」(出張報告書)と「財務省打ち合わせ概要」がある。福島県は「占有権限がないから出ていくのは当たり前」と主張。福島地裁も追認し、今年1月13日、不当判決を出した。

 しかし、2枚の文書によれば、県は「生活保護4・未契約4、計8世帯を2020年度の使用許可対象と考えている」と説明し、財務省は「了」とした。つまり、未契約避難者の占有権限を家主の財務省が認めている。裁判で追い出されるいわれはない。

 提訴された避難者は「なぜ、訴えられたのか分からない」と言う。県は事実を知らせもしなかった。知らないうちに「はめられた」のだ。

原発回帰政策と対決/総ぐるみの市民運動を/福島原発かながわ訴訟原告団団長 村田弘さん

 昨年6月17日の最高裁による4訴訟不当判決を覆すことが最大の課題だ。地裁段階で、国の責任認定は9対9、五分五分だった。判決後は9対14と大逆転。今、高裁段階では6対7と拮抗(きっこう)している。

 最高裁判決時、国の責任を認めた三浦裁判官反対意見や、東電旧役員に13兆円の支払い命令を出した昨年7月の株主代表訴訟東京地裁判決に依拠し、6・17の論理を打ち破ること。最高裁に上告した「いわき市民訴訟」が「不受理」にされると後続訴訟がバラバラにされ、「不受理」の雪崩が起きかねない。これを許さないことが喫緊の課題だ。

 損害賠償集団訴訟、権利を求める訴訟、各地の差止訴訟など、原発問題をめぐり司法の場で100を超える訴訟で抵抗している。「ノーモア・フクシマ」等のキャッチフレーズで一致し、総ぐるみの闘いで勝利判決をかちとり、原発回帰政策を跳ね返そう。



「再稼働を許さない」と声上げるさようなら原発全国集会参加者(3月21日・東京)
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