2023年04月07日 1767号
【リンさん 逆転無罪 「心からうれしい」/孤立死産事件で最高裁/次は技能実習制度廃止の闘いだ】
|
3月24日午後3時すぎ、最高裁正門前。雨脚が急に強まる中、移住者と連帯する全国ネットワークの鳥井一平さんが現れ、「勝訴 リンさん無罪」の垂れ幕を掲げた。歓声が雨音をかき消す。「満開です。きょうのサクラと一緒。リンさん、ありがとう」と鳥井さん。石黒大貴(ひろき)弁護士も「孤立出産が犯罪視されてきた歴史を変え、外国人実習生を孤立に追い込まない取り組みを後押し」、コムスタカ―外国人と共に生きる会の中島眞一郎さんも「多くの方がたの支援の賜物(たまもの)。日本でも、闘えば正義を実現できる」とコメントする。
ベトナム人元技能実習生レー ティ トゥイ リンさんの孤立死産事件で最高裁は「被告人の行為は習俗上の埋葬と相いれない処置とは認められず、『遺棄』に当たらない」と判断し、熊本地裁と福岡高裁の有罪判決には「法令違反と重大な事実誤認があり、破棄しなければ著しく正義に反する」として無罪を言い渡した。
報告集会にオンライン参加したリンさんが喜びを語る。「心からうれしい。事件が報道されるたびに嫌なことを書き込まれ、苦しめられたが、多くの方に慰められ、励まされ、希望を見出し、勇気を得て頑張ることができた。妊娠して悩んでいる技能実習生や女性を捕まえ、刑罰を加えるのではなく、相談でき、安心して出産できるような環境に保護される社会に日本は変わってほしい」
ウェブデザイナーの諸井聖也さんは自身立ち上げた「孤立出産.jp」サイトに出産経験者や産婦人科医、宗教家らから127通の意見書が寄せられたことに、支援する会の成毛(なるげ)佳季(よしき)さんは無罪判決要求署名が総数9万5128筆に上ったことに、謝意を表明。この日の傍聴希望者の列に「ネットニュースで見て関心を持った」という男子中学生3人組など若い世代の姿が目立ったことが、支援の広がりを象徴する。
ウェブマガジンでこの事件を伝えてきたライターの望月優大(ひろき)さんは「多くのものを失ったリンさん。きょうそれがすべて取り返せたわけではないという意味で警察・検察・地裁・高裁の判断は本当に大きかった」と批判。外国人技能実習生問題弁護士連絡会の指宿昭一弁護士は「リンさんは被害者。その人を保護するのではなく、刑罰に処す寸前まで行ってしまう日本社会はおかしくないか。きょうの勝利を技能実習制度の廃止、すべての外国人労働者の権利が守られる社会に向けた一歩としなければならない」と訴えた。
|
|