2023年04月14日 1768号
【命脅かす国民健康保険料値上げ 8割の自治体で市民直撃 保険料軽減―医療無償化の道へ】
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2023年度から国民健康保険料・税(国保料)を値上げする自治体が8割を超えると報じられた(3/2しんぶん赤旗)。物価上昇に加えて国保料値上げとなれば、約2660万人の国民健康保険(国保)の加入者の生活が直撃を受ける。
国保は、健康保険・共済組合・後期高齢者保険・生活保護以外の、自営業や非正規、無職、年金生活者を加入対象とする。非正規や無職が多いので加入者の所得水準は低い。一方、加入者の平均年齢が他制度より高いことから、医療を多く使う特徴を持つ。
国保料を滞納すると保険証が短期保険証や資格証明書に切り替えられ、1年以上の滞納では受診時に全額負担を求められる。「国保料が高すぎて払えない」のだから滞納者は全額負担などできない。滞納者は約200万世帯。強制徴収や年間数十万件に上る差し押さえは、非人道的施策の極みだ。国保料の値上げはさらに滞納者を増やし、多くの市民を受診から遠ざけ、生存権、命すら脅かす。
国保料はなぜ上がるのか
東京都に住む家族(夫、専業主婦の妻、10歳の子)で国保料を見てみよう。夫の所得金額が343万円(年収484万円)の場合、54万2900円となり、所得の15・8%を占める。このように国保料は所得の10数%となっており、家計への負担度が大きい。1人あたり国保料を他の制度と比較すると、中小企業労働者の協会けんぽの1・3倍、大企業労働者の組合健保の1・7倍だ。国保加入者の所得水準は低いのに、なぜ国保料が高いのか。
協会けんぽなどでは、世帯の人数にかかわらず加入者の収入に応じて保険料が決まる。ところが国保では、収入や資産に応じた「応能割」と収入にかかわらない「応益割」で決まる。応益割には平等割と均等割があり、平等割が世帯ごとの定額、均等割が世帯の人数に応じた額となり、合計して徴収される。応益割は、子どもなど所得のない人まで対象とし、人頭税(各個人に頭割りで同額の税を課す。悪魔の税制≠ニいわれる)に近い要素を含み逆進性を持つ。低収入や多人数の家族には負担が重なる。国はこの応益割の比率を増やし、事態を深刻化させた。
また、国庫負担金が減額されたことは重大だ。国庫負担金は、1983年まで国保会計総収入の約50%だった。84年の国保法改悪以降、国庫負担が削減されていき、総収入の約20%にまで低下している。自治体財政を圧迫し、値上げの背景となっているのだ。
国保について厚生労働省などは加入者が支え合う相互扶助の制度≠ニ説明するが、この論理は自己責任論に誘導する考え方である。滞納したら受診できないことに疑問を持たせないようにする。本来すべての市民の権利である医療給付を、保険制度が内包する排除の論理=負担がなければ給付されない≠ノ取り込もうとするものだ。
値上げでなく負担軽減だ
国保法第1条は「国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もつて社会保障及び国民保健の向上に寄与する」という目的を掲げている。国保は、生存権を保障する社会性を持つ保険であり、国がその責任を持つ。したがって、保険制度の社会性を高めるため、無収入や住民税非課税世帯を免除対象としなければならない。
まず、生活を直撃する国保料引き上げはやめさせなければならない。当面、収入減少による軽減の条件を緩和するとともに、現在「2割・5割・7割」となっている軽減額を、8割以上に引き上げるべきだ。国庫負担を元の水準に戻せば、国保料を協会けんぽに近い水準に引き下げられる。
今、各自治体で子ども医療費無償化の拡大政策が大きな争点となっている。国保料もむしろ引き下げこそ必要だ。応益割の割合を少なくし、最終的には応能割もなくし、医療完全無償化への道を切り開くことだ。
軍事費は青天井の一方で、社会保険料の増額など論外だ。地方選で、こうした要求を掲げ、誰もが安心して医療を受けられる自治体をめざそう。 |
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