2023年04月21日 1769号

【原発推進束ね5法案は廃案だ 原発全面回帰を「国の責務」と強要】

 政府が今国会に提出、衆院での審議が続く原発推進束ね法案。「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」の名で、電気事業法など性格も性質も異なる5法案を審議も採決も一括強行突破するいつもの手口だ。どれもこれも問題だらけで廃案以外にない。

原発「推進基本法」に

 5法案の中でも最悪なのは原子力基本法の改悪だ。同法は日本が原子力の開発に乗り出す際、軍事転用(核開発)を防止するため、研究の基本的方向性を示す目的で制定された。原子力開発に「自主・民主・公開」の原則を盛り込み、原子力の憲法と呼ばれてきた。

 改定案で、政府は原子力開発の目的に「産業の振興」「地球温暖化の防止」を追加する。経済のためなら原発事故で市民が死んでもいいという究極の「命よりカネ」政策だ。

 原発を通じたエネルギー安定供給を「国の責務」とする露骨きわまりない規定も盛り込まれている。再生可能エネルギーなどへの投資を妨げ、危険で未来のない原発依存を半永久的に固定化する。日本社会の未来さえも閉ざしてしまう。

 「エネルギーとしての原子力利用」は「福島第一原発事故を防げなかったことを『真摯に反省』した上で『原子力事故の発生を常に想定』し『防止に最善かつ最大の努力』が必要との認識に立って行う」と謳(うた)う。原発事故が起きることを前提とする、このどこが「真摯な反省」なのか。反省というなら原発は即時全機廃炉以外にない。

 あまりに恥知らずな法案に、かつて原発推進だった識者≠ゥらさえ強い批判の声が上がる。鈴木達二郎・元内閣府原子力委員会委員長は「基本法は原子力利用の基本的な哲学や方向性を示すもの。なぜ改正するのか理解に苦しむ。推進側を後押しするための強引な基本法改正」だと批判する。

 北村俊郎・元日本原子力発電(原電)理事も「事故の教訓を忘れている。原発推進は経済的にも不合理な判断」と疑問を呈する。会社から「原発は安全。事故は絶対に起きない」と言われて購入した富岡町(福島第二原発の地元)の自宅は避難区域になり、帰還できないまま解体となった。

「40年」には根拠

 原発運転期間を原則40年、例外60年とする規定も、停止期間を運転期間に上乗せできる改悪でさらに骨抜きになる。「原則40年は目安であり根拠はない」という政府の説明は間違っている。

 東京電力が、福島第一原発3号機を設置する際に国に提出した「原子炉設置変更許可申請(三号炉増設)」資料には原子炉の「寿命末期、つまり四十年後」とする記述がある。東海第二原発建設時に原電が提出した設置許可申請にも「メーカーは(中略)主要機器の設計耐用年数を四十年としている」と記載されている。原発メーカーも電力会社も、寿命40年を前提に設計したことがわかる。

 法案は「耐用年数が切れても電化製品を使い続けろ」と要求するものだ。断じて許されない。

脱原発を果たすには

 原発推進「啓発」団体である日本原子力文化財団が毎年実施する世論調査がある。ウクライナ戦争後のエネルギー事情も影響した2022年調査では、再稼働容認の意見が増えた。だが詳細を見ると、再稼働に「国民の理解が得られていない」が46%。高レベル放射性廃棄物の最終処分場は51%が「しばらく決まらない」と回答している。

 今後日本が利活用すべきエネルギー源は太陽光73%、風力64%、水力55%に対し、原発は26%にとどまる。再稼働容認の理由では「電力の安定供給」35%以外、3割を超える項目はなかった。

 原発事故の危険を感じつつ「エネルギー不足」の宣伝の間で揺れる市民の意識が調査からうかがえる。



 ウクライナ戦争以降、エネルギー不足に苦しむドイツは、それでもメルケル前政権の公約通り4月15日限りで脱原発を実現させる。

 日本でも脱原発を実現するために、原発の実態が基本法と正反対の非民主・隠蔽≠ナあること、核ごみや健康被害、避難の問題を徹底して訴えよう。同時に、再生可能エネルギー安定供給の道筋を示すことも必要だ。

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