2023年04月21日 1769号

【最高裁勝利の東リ偽装請負裁判闘争/非正規労働者5人 6年の闘いで解雇撤回 正社員で復職/全東リなかまユニオン】

 3月27日に兵庫県伊丹市の東リ(株)本社前で、全東リなかまユニオン5人の就労を激励する送り出し集会が開催された。違法派遣(偽装請負)で働かされていた非正規労働者が、派遣先企業(発注元=派遣先)の正社員として復職を果たしたのだ。

 送り出し集会には「就労を求める全東リなかまユニオンを勝たせる会」代表の大橋直人さん、伊丹市議のおおつる求(もとむ)さん、高橋あこさんなど、多くの支援者が駆けつけ、5人を激励。

 組合員5人は「6年ぶりにここに立って、感慨深いです。これからが本番と思ってがんばります」と決意とお礼の言葉を述べた。

 なかまユニオン委員長の井手窪啓一さんは「これは、違法派遣で働かされていた労働者が派遣先企業の正社員として雇用された、日本で初めての実例。非正規労働者の雇用の安定に寄与していくため、この実例を大いに広めなければならない。5月14日に予定している報告集会を大きく成功させたい」と改めて勝利の意義と今後の展望を語る。

 復職を果たした組合員から思いを寄せてもらった。

新職場でがんばる

 2017年3月、長年、偽装請負で働いてきた私たちL・I・A労働組合(全東リなかまユニオンの前身)の組合員5名だけが東リ伊丹工場から、不当労働行為により失職し追放されたのが、約6年間の長い闘いの始まりでした。

 私たちは、東リに対して解決を迫るために、神戸地裁へ派遣法40条の6「労働契約申込みみなし制度」適用による、全国初の地位確認を求める裁判を提訴。一審の神戸地裁は不当判決―敗訴でしたが、二審大阪高裁で逆転完全勝訴し、最高裁が東リの上告を不受理としたため昨年6月7日に高裁判決が確定しました。

 しかし東リは、“工場の人員が充足しているので、職場に復帰させられない”との理由で私たちに自宅待機を命じました。団体交渉を重ね、兵庫労働局からの東リへの働きかけ等により、晴れて3月27日から職場復帰することができました。

 4月14日までは研修期間で、その後に私たちの配属先が決まります。東リとの残った問題は、就労しながら労働組合運動で解決していこうと思います。

 この約6年間、精神的にも経済的にも苦しかったですが、60歳という年齢なので、年金がもらえるようになるまで、新しい職場でがんばっていきたいと心から思っています。

(全東リなかまユニオン執行委員長・藤澤泰弘)

仲間と支援の力で

 3月27日、私たち5人の職場復帰の日がやってきました。東リ本社正門前で、数多くの支援者の方々が集まり、就労を祝い会社に送り出す集会を開催しました。

 支援者の方々からの激励を受け、私たち5人が、感謝の気持ちと、就労にあたっての決意を述べました。6年間の苦闘や、就労への喜びや不安など、5人それぞれに思いを語りました。

 正直に言うと、闘争には勝利しましたが、実際に就労するとなると、「めでたし、めでたし」とはいかないのではないかという不安があります。東リの社員がどんな態度で私たちを受け入れるのだろうかと、みんな気になっています。まだまだ安堵(あんど)できません。

 私たちが正社員として就労することに、支援者の方々は心から喜んでくださっていると思いますが、その気持ちに応えられるように、一日も早く仕事に慣れ、一人前に働けるようになりたいと思います。

 職場復帰と言っても、以前の職場とは違う場所に配属されるので、また一から仕事を覚えなければなりません。最初の3週間は研修で4月17日から新たな配属先が決まる予定です。

 これからどんな問題が起こるかわかりませんが、これまで闘ってきた仲間と強力な支援者の力添えがあれば、切り抜けることができると思います。しっかりと見守っていてください。

(全東リなかまユニオン書記長・有田昌弘)

東リ偽装請負裁判

 2017年3月、建材メーカー大手の東リ活ノ丹工場の請負労働者が労組を結成して偽装請負を告発したところ、会社が組合員5人を職場から排除。この不当解雇撤回を求めた裁判で、21年11月、大阪高裁は労働契約申込みみなし制度に基づき雇用関係を認定する勝利判決。22年6月に最高裁で判決が確定した。

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