2023年04月28日 1770号

【2023春闘の大手賃上げ 全労働者の生活改善にはならない ただちに最低賃金時給1500円だ】

 4月12日、日本労働組合総連合会(以下 連合)は、2023春闘の第4回回答集計結果を発表した。

 賃上げ(定期昇給維持を含む)を要求した4468組合中、回答を引き出した3066組合の「定昇込み賃上げ」は加重平均(数値の重みを考慮した平均)で1万1022円=3・69%。中小1241組合は5246円=2・07%。有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額は加重平均で時給56・65円=5・36%、月給9964円=3・96%である。

資本も対応せざるを得ず

 自動車や電機の労働組合が加盟する全日本金属産業労働組合協議会(金属労協)は、妥結した43組合の回答額平均が8407円で、2014年以降、最も高い水準になったと発表。賃上げ率は、ホンダが5%、日産が3・4%。日立製作所、パナソニックホールディングスなど電機大手12社は、いずれも満額回答。基本給を一律に引き上げるベースアップ相当として7000円で妥結。日立は賃金体系維持分と合わせた平均昇給率が3・9%となった。

 連合は2013春闘以来の高額賃上げであると自賛し、マスコミも画期的と報道する。しかし、昨年12月の物価上昇率が前年同月比4%という異常な高騰に見合うものにはなっていない。

 大企業を代弁する経団連の十倉会長は新年あいさつで「今回一番重要視する必要があるのは物価高だ。この30年、賃上げをした経験がほとんどない。可能な企業にはベースアップを伴う賃上げで経済を回していく方法を是非考えていただきたい。物価と賃上げの好循環への絶好の機会で、ポジティブに考えていくべき」と発言している。

 30年間にわたる日本の賃金の低迷と経済不況の中で、昨年からの物価上昇を契機に経済回復への対応として資本の側も今回の賃上げに踏み切った。連合が掲げた5%の目標自体が物価上昇に見合うものでなかったこともあって満額回答は経団連の許容範囲だった。

 連合の「定昇込み」表示には注意が必要だ。毎年の定年退職者の発生を前提とする定期昇給の金額は企業にとって負担増にはならない。ベースアップだけが企業の人件費負担増となり、労働者全体への賃金増になる。仮に「5%賃上げ」と発表されても、定昇を除けばベースアップは2%程度。物価上昇の中で実質賃金はさらに低下していく。

 昨年来のストライキ闘争を継続する英国労働者が、10%の物価上昇率を大きく超える19%要求を掲げて闘いぬいているのと対照的だ。

中小企業360万社は

 一方、中小はどうか。

 日本商工会議所(日商)は3月28日、中小企業を対象に行った調査で、2%以上の賃上げを実施する企業が58・6%となり、うち賃上げ率4%以上の企業は18・7%になると発表した。調査は2月、全国約6000社の中小企業に賃上げ状況などを尋ね、3300社余りが回答したものだ。

 ただし、日本全体の中小企業は357万8176社(独立行政法人中小企業基盤整備機構)。日商調査だけから、中小企業の60%近くが2%以上賃上げしていると見るのは疑わしい。日商の会員数は123万社で、ここには大企業も含まれ、全中小企業の3割程度しか加盟していない。

 約360万社の6割は「小規模事業者」だ。製造業で従業員20人以下、商業サービスなら5人以下の、いわゆる「零細企業」である。こうした容易に賃金が上げられない小さな会社≠ェ、全国に200万社以上あり、賃上げなど無縁≠ニいう労働者が多数存在するのが実態だ。

零細企業支援と一体で

 大企業や日商会員の中小企業とは別の世界≠ナ日々運営されている「零細企業」でどう賃上げを実現させていくのか。そのためには、最低賃金を日本全国一律に時給1500円まで引き上げることだ。

 現在の最低賃金は中央最低賃金審議会で示された目安をもとに地方審議会を経て都道府県労働局長が決定する。運動で社会的圧力を強めなければならない。

 少し前まで最低賃金を引き上げるな≠フ大合唱だった日商会員企業で、23年度最賃改定について約4割が「引き上げるべき」と答えるという変化もある。重要なのは、大企業の価格引き下げ強要など格差の元凶である下請け支配構造を公的に規制することだ。同時に、政府による零細企業成長のための財政支出を含めた手厚いサポートと一体で、ただちに最低賃金引き上げをさせなければならない。



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