2023年05月05日 1771号
【グローバル資本のための国益≠nDA強化狙う/開発協力大綱案/批判のパブリックコメント集中を】
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外務省は4月5日、「ODA(政府開発援助)大綱」の後継である「開発協力大綱」改定案を示し、4月5日〜5月4日を期間として意見募集(パブリックコメント)を始めた。
また同日、「ODAとは別に、同志国の安全保障上のニーズに応え、資機材の供与やインフラの整備等を行う、軍等が裨益(ひえき)者となる新たな無償による資金協力の枠組み(政府安全保障能力強化支援(OSA))を導入する」と発表。OSAは、「ODAとは切り離されたものであり、ODAの非軍事原則に変化はない」と説明した。これはOECD(経済協力開発機構)によるODAの統計上の定義に「軍事援助等が除外されている」ことから「それに属さない」と言っているに過ぎず、税金を使って軍事支援するOSAを「正当化」する根拠は何ら示されていない。
「開発協力大綱」改定案について、メディアなどは「非軍事原則は維持された」とする。しかし、その特徴は、「ODAとその他の公的資金や民間資金との連携を強化」「オファー型協力を強化」としている点に現れている。つまり、(1)ODAだけでなくその他の公的資金や民間資金も対象として国際的「支援」の名の下にグローバル資本の利益のために戦略的に活用し、(2)そのためにこれまで原則としてきた「要請主義」を捨て日本側から案件を提案する「国益ODA」を強化する方針なのである。
さらに、(3)「海上保安能力の向上を始めとする支援」など安保(=軍事)政策とのリンクを強化するなどの問題を持っている。
昨年12月の「有識者懇談会」報告書公表以降、外務省主催の意見交換会などを通じて、多くの市民、NGOから「ODAの非軍事原則」の形骸化を危惧する意見が発せられた。この「大綱案」は一見これに配慮した体裁をとっている。
中国への対抗が目的
しかし一方、「…所得水準が相対的に高い国に対しても(中略)無償資金協力や技術協力を含む必要な協力を戦略的に活用」として、中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する「自由で開かれたインド太平洋」構築のためにグローバルサウス(新興国・途上国)の取り込みを狙う意図を明らかにしている。ODAをはじめとした公的資金や民間資金を、こうした政治目的を掲げ、グローバル資本のために使うという政策方針がこの「大綱案」である。
こうした問題点を指摘し、軍事支援の本格的推進を許さぬため、「途上国の貧困問題を解決する仕組みをつくれ」などの意見をパブリックコメントに集中しよう。
(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション〈コアネット〉・三ツ林安治)
◆外務省「開発協力大綱案についての意見募集」 |
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