2023年05月05日 1771号
【ミリタリー・ウォッチング/軍需産業生産基盤強化法案/死の商人≠税金で育て支える/先は殺傷兵器輸出の全面解禁】
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軍事優先を明確に否定した日本国憲法。その下の国会で軍事最優先のとんでもない二つの法律が提出され審議されている。
一つは、5年間で総額43兆円の防衛(軍事)予算確保のための“軍拡財源確保法案”。もう一つは、現状では儲けが出ないと撤退が相次いでいる国内の軍需産業を立て直すために、国家から資金援助し、武器輸出を促進することなどを柱とした“軍需産業生産基盤強化法案”(正式名「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」)。いつもながら一見、ピンとこない名称にしながら、要は、戦争で荒稼ぎする“死の商人“を国民の税金で育て、支え続けるというひどい法案である。具体的には▽輸出促進に向け、相手国の要望で仕様を変える場合、基金から助成金を交付▽企業によるサイバー攻撃対策の強化費も支援▽重要な装備品の製造が困難になった際は、国が工場を買い上げ企業に管理を委託できるようにする―と死の商人≠ノとっては至れり尽くせりの内容である。
この間、日本政府は、敵基地攻撃兵器を調達するためにトマホーク・ミサイルなどポンコツの米国製兵器を「爆買い」しているとの批判を浴びた。だが、政府・防衛省も軍事面での米国依存にいつまでも甘んじているわけではない、と国産の武器生産能力確立への決意と実行計画を打ち出してきた。トマホークに代わる国産ミサイル、陸上自衛隊の「12(ヒトニ)式地対艦ミサイル改良型」(射程1000`以上)はその目玉商品の一つだ。こうした国産の武器開発、製造を担う企業を、当面は国の資金で手厚く保護しようというのが今回の法案の眼目である。
法案が見据える次の課題も明らかだ。武器生産で「十分な利益をあげる」ことができる展望を示すことである。武器を生産しても、十分な利益、大儲けができないのは、自由に輸出できないからだと捉える。
政府は、輸出に道を開くため、全面的に輸出を禁じた「武器輸出3原則」を改悪し、2014年「防衛装備移転3原則」に変えた。だが、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5分野に限定という規制を残さざるを得なかった。この規制も障害となり、輸出の実績はほとんど上がっていない。
ターゲットは間違いなく武器輸出全面解禁である。殺傷可能な武器の輸出全面解禁で莫大な儲けを保証し、巨大軍需産業の基盤を築く突破口とする歴史的な悪法だ。通してはならない。
豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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