2023年05月12・19日 1772号
【マイナ保険証の危険な役割/個人情報の吸い取り装置に】
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現行の健康保険証の廃止などを盛り込んだマイナンバー法など関連法改定案が4月27日、衆院本会議で自民・公明・維新などの賛成多数で可決した。このまま改定案が成立すれば、政府は来年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針だ。
カードを持たない人が保険診療を受けるには、紙の「資格確認書」が必要になる。ただし、取得するには本人申請が必要で、有効期限は最長1年。しかも、窓口の費用負担がマイナ保険証より割高になるように設定されている。
マイナ保険証にしなければ手間だし損をする―。これはもう健康保険証を“人質”にしたマイナンバーカードの取得・利用の強要だ。なぜ、そこまでするのか。政府が狙う個人情報の大量収集、民間企業への提供のために欠かせないことだからである。
発行番号を鍵に
マイナンバーカードのICチップには公的個人認証用の電子証明書が搭載される。搭載は希望制だが、電子証明書がなければマイナ保険証として使うことはできないし、マイナポイントも受け取れない。
この電子証明書には固有の発行番号(シリアルナンバー)が割り振られている。カード取得者に紐付けられており、マイナンバーのように個人を特定することができる。だが、法律上の扱いは大きく異なる。
マイナンバーの利用範囲は限定されており、取り扱い違反には罰則規定がある。そうした規制が発行番号には存在しない。その利点を、ある自民党議員はこう述べている。「使い勝手がめちゃくちゃ良い。マイナンバー制度の肝はここにあるんですよ」(5/2朝日)
実際、政府は「電子証明書の発行番号と顧客データを紐づけて管理することにより、様々なサービスに活用が可能」として利用を促している。ただし発行番号の付番者が少なければ、このシステムは機能しない。そこで政府はマイナ保険証の強要を通して、「任意の番号」にすぎない発行番号を全国民的に普及させようとしているのである。
誘導 選別に利用
カードの様々な利用履歴を発行番号を鍵に連結すれば、正確なプロファイリングが容易になる。対象とする特定の人物のリスク評価や将来予測ができるということだ。たとえば、行動や購買の履歴から顧客の所得や趣味を推測し、購入の可能性が高いと推測される商品の案内を効果的に行うことが可能になる。
サービスの制限や排除にも使える。個人情報から病気になるリスクが高いと判定した者の生命保険料を引き上げるというように。デジタル監視大国・中国のように、治安対策に使うことも想定しているだろう。
EU(欧州連合)は個人データの保護を基本的人権ととらえ、プロファイリングされない権利を法に規定している。一方、日本政府は監視資本主義を全面展開することしか考えていない。だからマイナンバー法の改定は危険なのだ。許してはならない。 |
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