2023年05月12・19日 1772号

【みるよむ(654)2023年4月22日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの未来を破壊する子どもへの暴力】

 イラク社会では子どもに対する暴力が日常的に行われている。家庭の中でも外でも、いたる所で暴力の被害を受ける子どもは、イラクの子ども全体の80%にも及ぶといわれる。2023年3月、サナテレビはこの深刻な問題を取り上げた。

 映像の最初、小さな子どもが「ほっといて。死にたいよ、お父さん」と泣き叫んでいる場面が出てくる。親から暴力を受けているからだ。宙づりにされ、顔面を殴られるなど、目を覆う暴力と虐待を受けた子どもたちの姿が映し出される。

 暴力を受けるのは「家庭、学校、そして礼拝の場など、あらゆる場所だ」という。「暴力が教育の本質的な部分となっており、それを誇りにしているほどだ」と指摘される。子どもへの暴力の場面が撮影されSNS上で拡散されている。

 地域の警察は何もしない。ただ、子どもに暴力をふるった人物から「同じことをくり返さない」と約束する書類を書かせるだけだ。

児童保護法案も放置

 国民議会では、子どもを守る児童保護法案が審議も採決もないまま放置されている。サナテレビは「議会は子どもに対する最大の犯罪者だ」と厳しく批判する。

 一方、イスラム主義政党だけは「子どもに対する(叱責の)言葉や身体的な暴力は家族の結束につながるが、児童保護法は家族を崩壊させる」と主張する。子どもに対する暴力と人権侵害は、家族を通じた支配政策を反映しているのだ。

 レポーターは「子どもへの暴力容認は、私たちを暴力の悪循環に陥れ、心に重い傷を負った世代を生み出す原因となる」と語る。

 増え続ける子どもへの暴力は社会のひずみの反映である。サナテレビは、児童保護法の採択とその厳格な執行、被害を受けた子どもの保護施設設置などを提案している。人権の守られる社会へと変革する視点から、暴力の撤廃を訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS