2023年05月26日 1773号

【ZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)第2次署名拡大を/1次署名9千余筆 米連邦議会下院議員オカシオコルテス事務所へ/対中国軍事緊張とめる国際連帯を】

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は沖縄・辺野古新基地建設を阻止し、普天間米軍飛行場の即時閉鎖を求めるZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)として、新たな署名に取り組んでいる。沖縄・琉球弧のみならず日本列島全体を基地化し、対中戦争の最前線にする動きを止めるためだ。世界を戦場にし、人の命で利潤をあげようとする軍需産業や好戦勢力を抑え込むには、平和を求める国際連帯行動の必要性がいつにもまして高まっている。

連邦議会に沖縄問題を

 ZHAPの署名は、2021年5月に始めたものがある(1次署名)。沖縄辺野古新基地建設阻止にむけ日本政府にだけでなく、米政府にも圧力をかけようとDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)とともに9千余筆を集め、今年3月末、米連邦議会アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(AOC)のワシントン事務所に送った。今後この署名がどんな成果を生むか、注目される。

 AOCは2018年、史上最年少の女性下院議員(29歳)となったDSAの有力議員だ。20年、22年と勝利し3期目。労働、人権、環境と幅広い活動を続けている。バイデン政権の軍事費などの拡大予算案に民主党議員で唯一反対票を投じるなど、その影響力は大きい。

 沖縄県玉城デニー知事が今年3月訪米した時、AOCとの面談が実現した。辺野古新基地の課題とともに発がん性が指摘される有害物質PFAS(有機フッ素化合物)問題や「台湾有事」の平和的解決、そして日米両政府が沖縄の人権をないがしろにしている点など、予定の時間を大きくこえ、意見交換が行われた。米政府は玉城訪米に焦点が当たらぬよう高官の対応を控えたが、「影響力を持つ(AOC)議員と玉城氏が接点を持ったことに強い関心を示した」(3/20沖縄タイム)という。

DSAとの連帯行動の成果

 こうした機会が生まれたのは、DSAとの連帯行動を継続してきたことが大きい。特に、昨年9月、ジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)の国際担当で、沖縄環境正義プロジェクト(OEJP)代表の吉川秀樹さんが米連邦議会上下両院の軍事委員会に属する議員32人に送った書簡キャンペーンに取り組んだことだ。

 この書簡は、玉城知事の辺野古設計変更申請不承認理由をベースに、「辺野古が唯一」と建設を強行する日本政府の言い分が受け入れられるのか、米議会が事実に基づいた調査をするよう求めるものだ。国内外の労働、環境、平和運動など100以上の団体の他、米地方議会議員45人が賛同した。吉川さんが築いてきた協力団体に、DSAメンバーが拡げた団体、DSAが支援する議員が加わった。

 160人近くの地方議員を擁するDSAだが、その一大拠点であるニューヨーク(NY)州から州上院議員2名、下院議員4名、NY市議会議員3名など計14名の議員が賛同した。このようなNY州内地方議員と連邦議会とのパイプとなっているのが外ならぬNY選出のAOCだ。この書簡を軍事委員会以外の連邦議員にも広げるうえで、AOCワシントン事務所が真っ先に打診先になったのは自然な流れだった。

 これが、玉城訪米時の面談につながった。日本の地方自治体では唯一ワシントンに事務所を開設している沖縄県。今年度の活動方針に「米国内市民団体等との連携による連邦議会等への働きかけや情報収集の強化に取り組みます」と記載している(「沖縄県ワシントン駐在活動報告2023年3月)。沖縄県の取り組みを大きく後押しする市民の国際連帯活動のさらなる拡大が問われている。

「辺野古が唯一」を崩す鍵

 辺野古新基地建設阻止の展望は、軟弱地盤対策や耐震強度不足などの問題点を米政府に言及させることにある。「辺野古が唯一の解決策」と日米政府が口をそろえているが、実際に完成できるのか、工法のめどすらたっていない。SDCCが4月に行った防衛省との交渉でも、設計変更を米政府が了解しているとは言明できなかった(本紙1772号9面既報)。

 日本政府は辺野古の地盤条件や設計基準を米政府に正しく伝えていない可能性がある。伝えていたとすれば、米政府から疑問が出されているに違いない。これは政策の問題ではない。安全な施設ができるのかどうか、土木工学の問題なのだ。

 25年前、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告には、技術専門家チームがサポートする日米作業班(FIG)が辺野古新基地の立地条件や工法などを協議して決定するプロセスが示されていた。米軍基地の安全性に米側が無関心なはずはない。

 軟弱地盤の存在を沖縄防衛局が認めてから既に5年以上が経過している。国土交通省から専門の技官が出向して計画を練り直しても、自信の持てる工事計画が出きていない。既に技術的には不可能との判断が出ていてもおかしくない。日本側が出せないなら、米側に出させればよい。連邦議会軍事委員会に公式な調査を求める吉川書簡の意味がここにある。連邦議会議員への働きかけを強めるために、AOCらDSAとの連携が一層重要となっている。

米大統領あてに軍縮求める

 日米政府は「台湾有事」を煽り、対中国軍事包囲網の形成に全力を挙げている。沖縄・琉球弧へのミサイル配備をはじめ、日本列島の基地強靭化をはかるなど、軍事緊張をつくり出している。

 ZHAPの新たな署名(2次署名)は、バイデン米大統領に対し日本列島を対中国の最前線にするなと要請するものだ。軍事同盟の強化ではなく、緊張緩和と軍縮を求めている。代替施設としての辺野古新基地が物理的に完成不可能であっても、普天間基地閉鎖は米政府の責任で行わなければならない。基地周辺住民だけでなく、米兵自身の健康にも影響するPFASの汚染を即刻解消しなければならない責任があることを指摘する。

 軍事大国化を急ぐ岸田政権は日米軍事同盟を軸にNATO(北大西洋条約機構)との一体化まで想定している。まさに軍事同盟のグローバル化をはかろうというのだ。

 こうした情勢であるからこそ、平和を求める市民の国際連帯の取り組みはことのほか重要だ。辺野古新基地建設を断念させ、普天間基地閉鎖に追い込むことは、大きな意味がある。対中軍事緊張政策にほころびをもたらすことになる。



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