2023年06月02日 1774号

【みる…よむ…サナテレビ(657)2023年5月6日配信/イラク平和テレビ局in Japan/政府によるアルコール飲料禁止/市民の自由奪う。憲法にも違反】

 2023年初頭、イラク政府はアルコール飲料の製造や販売を禁止する法律を発効させた。これは個人の自由を奪うものだとして多くの市民が反対の声を上げている。3月、サナテレビはこの問題を取材した。

 ある市民は、イスラム教の名でアルコールを禁止しながら、同じく厳しく戒めているはずの盗み、略奪、汚職≠ェ容認されている不条理を批判する。

 イスラム聖職者は「キリスト教徒として酒を飲みたいのであれば、家で飲みなさい。イスラム教徒の前で酒を飲むなら、それは害を与えることだ」と言い放つ。イスラム主義勢力が市民を支配するためにアルコール飲料禁止を利用している。

 酒屋で働く人は「酒を飲んでも他人の自由を侵害しているわけではない。酒を飲むことは個人の自由だ」とごく当然の意見を述べる。

 市民は「バグダッドはカンダハルにならない」とプラカードを掲げる。アフガニスタンの都市カンダハルはタリバンの支配の象徴だ。イスラム教を使った支配に抗議の声を上げているのだ。

 アルコール禁止を破る者には1000万〜2500万ディナール(約100万〜250万円)もの罰金が科される。サナテレビは、イラク憲法の「憲法の基本的な権利と自由に反する法律の制定は許さない」に違反していると批判する。

イスラム教支配と利権

 市民の自由を侵害し、憲法に違反するアルコール飲料禁止。なぜ政府は強行するのか。サナテレビは「アルコール飲料を販売する闇市場を設立して価格をつり上げ、酒販店のオーナーから販売料を巻き上げる」、そして「闇市場を利用してマフィアやイスラム主義政党の資金源をさらに広げる」とその狙いを暴く。

 イスラム教による支配強化とどす黒い利権獲得が狙われている。サナテレビは、こうした社会の腐敗を批判し、変革を呼びかける。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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