2023年06月09日 1775号

【G7向け「やってる感」でごまかすな/LGBT差別禁止法 制定を急げ/OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉代表 大阪府茨木市議 山本よし子】

 岸田政権は、G7議長国として性的マイノリティの人権を擁護する法律「LGBT法」制定に動かざるをえなくなった。G7広島首脳コミュニケで「ジェンダー」について次のように宣言した。「あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する」とし、「世界中の女性およびLGBTQIA+の人々の人権と基本的自由に対するあらゆる侵害を強く批判する」

 しかし、日本は性的マイノリティの権利について大きく立ち遅れているにも関わらず、政府が積極的に取り組もうとしていないことは批判されなければならない。林芳正外相自身「日本以外のG7は、何らかの形の性的指向、性自認に基づく差別を禁止する法令及び同性婚法またはパートナーシップ制度を有しているものと承知している」と述べている (2/7記者会見)。

 実際はG7以外の国、地域にも広がっている。性的指向、性自認を理由にした差別を禁止する法律は65か国85地域に、同性婚やパートナーシップを認める法律は31か国35地域(13年内閣府)に及んでいる。日本には差別禁止法も同性婚を認める法律もない。

自民の骨抜き法案

 現在、国会に提出されているLGBT法案は三つ巴状態になっている。

 本命は、すでに2年前に自民党も含む超党派で作成した「性的指向又は性自認を理由とする差別の解消等の推進に関する法(差別解消法)」案だ。「性的指向」と「性自認」の定義づけを行ったうえで、行政機関、雇用の分野、学校等での差別の解消(禁止)のための措置を定めている。

 しかし、自民党はこの案の通過を妨害するかのように「LGBT理解増進法」案なるものを出してきた。

 この法案には問題点がいくつもある。まず、「差別禁止」でなく「理解増進」であること。具体的には法律ができても行政が調査を行う程度であり、裁判を起こしても効力は弱いし、学校や職場での「理解」は努力目標にとどまってしまう。

 さらに、差別解消法案の中の「性自認」をすべて「性同一性」に置き換えていること。これは、自分の性を女か男かに限定せず、様々な多様性を認める「性自認」とは大きく異なる。

 これは自民党内保守派の「差別ということばは削りたかった」(片山さつき参院議員・安倍派)という本音を反映した骨抜き法案≠ナあり、やってる感だけ法案≠ニいうそしりを免れない代物だ。

 3本めは維新と国民民主の法案。「性自認」を「ジェンダーアイデンティティ」と言い換え、違いを強調しているだけのもの。

 性的マイノリティを取り巻く社会には多くの差別や偏見が根強く残っている。当事者が被害を受け命の危機につながることもある実態を見据え、差別禁止法を今すぐ制定しなければならない。
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