2023年06月09日 1775号

【未来への責任(374)/二度と「遺骨問題」起こさせない】

 5月25日、「第2沖縄戦を許さない!戦没者遺骨問題ガマフヤーと国との意見交換会」が、衆院第1議員会館で「戦没者遺骨」を巡るあらゆる問題を網羅した対政府交渉として開催された。

 まず、南部遺骨土砂採取問題で初めて行った環境省交渉では、国定公園である沖縄戦跡公園内の土砂採取に対して自然公園法で指定されている「国定公園」に戦跡という概念を入れて国として何らかの措置ができないものかと追及。「すべて知事の権限」と言って逃げる環境省に「沖縄戦跡保護」の重要性を訴えた。沖縄戦遺骨収集ボランティア、ガマフヤーの具志堅隆松さんは、土砂採取予定地を県が買い取って保護する運動を始める決意を述べた。

 厚生労働省交渉では、1863件のDNA鑑定の照合がまだなされていないことに関して、「170余名の韓国人遺族を後回しにしているのではないか」「日本の戦争のために駆り出されて亡くなった韓国人遺族こそ優先して鑑定すべきではないか」といった声が日本人遺族からも上がった。

 外務省も南太平洋のタラワ島で確認された韓国人軍属の遺骨返還問題について、遺骨鑑定事業はそれぞれ日米、韓米間の協定に従って行っているので日本政府は「関与しない」と発言した。

 加害者日本の無責任な姿勢に、会場から「いったい誰が朝鮮人をタラワに連れて行ったのか」と、怒りの声があがった。これに対し外務省は、韓国人遺族を目の前に「歴史問題について答える立場にはない」と繰返すだけ。一貫して朝鮮植民地支配責任を否定してきた日本政府の主張を恥ずかしげもなく堂々と%囎ルする若い外務官僚の姿に会場は騒然となった。

 最後に防衛省との意見交換には、「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」「石垣島の平和と自然を守る市民連絡会」が会場参加。宮古島や「浦添西海岸の未来を考える会」はオンライン参加し、それぞれの要求を突きつけた。

 浦添からは遺族が「親族が沖縄戦で亡くなりそれが原因でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になって死んだ叔母がいる。遺骨土砂を埋め立てに使うのはとんでもないこと」と発言。石垣島からは5項目53点に及ぶ詳細な要請書が防衛省に手交された。

 宮古島からは基地内での「防空壕」工事とみられる様子や一般道を走る自衛隊車両の写真を見せながら追及、「担当部署でないので答えられない」など木で鼻をくくった対応に対し、後日の文書回答を求めた。

 「戦没者遺骨」をめぐっては問題が余りにも多岐にわたり、対政府交渉も延べ5時間を超えた。

 「沖縄の遺骨」と「韓国人の遺骨」を軸に行った今回の交渉から浮かび上がってきたのは、再び戦死者を出させない、そして二度と「遺骨問題」を起こさせないためには、国の「戦争政策」を根本的に転換させなければならないということである。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)
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