2023年06月09日 1775号

【みるよむ(657)/2023年5月13日配信/イラク平和テレビ局in Japan/「カワリヤ―(被差別民)」は人間だ―マイノリティーへの差別を許さない−】

 イラクは多民族・多文化の国。しかし、マイノリティーは様々な社会的差別を受けている。2023年4月、サナテレビはイラクのロマ(移動少数民族)のグループであるカワリヤー(「ジプシー」の蔑称で呼ばれる)の人々を取材した。

 このマイノリティーの人々はかつては20万人、現在は5万人ほどが首都バグダッドなどで暮らしている。

 差別されてきたカワリヤーはダンスや歌などの芸能を職業としてきた。2003年のイラク占領以前は政府当局は、この人たちの職業を認め社会サービスもすべて提供していた。

 ところが現在のイラクでは状況が全く変わっている。「最悪の形の差別と侮辱」を受け、占領後の数年間はダンスや歌を演じることを妨害され、生活は窮乏に追い込まれた。政府当局は身分証明書さえ発効しない。

 サナテレビはカワリヤーの男性にインタビューした。男性は幸い身分証明書を手に入れることができた。イラクに居住するイラク人で、父も祖父母も全員イラク人。有権者登録証も持っている。だが、彼は政府部門の雇用からは排除されている。

 中部ディワニヤ州人権高等委員会の所長は「ロマが受ける差別による苦しみは、市民としての自然権の侵害である」と批判し、「彼らの村に適切な飲料水の配給所がなく、廃棄物がたまり、健康な環境が損なわれている」と差別を告発する。

人権獲得を訴える

 サナテレビは「イラクのロマに降りかかるこの悲劇は、人類に受け入れられるものではない。イラクと世界中の人権団体がカワリヤーの人々の人権獲得のために立ち上がろう」と訴えている。

 カワリヤーの人々に対する差別はイラク政府が意図的に作り出し、分断支配のために利用している。サナテレビは市民に差別を許さない闘いを呼びかける。日本からも連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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