2023年06月16日 1776号

【介護職員不払い残業代裁判 弁論開始/安心して働ける施設を/なかまユニオン神明会ラ・アケソニア分会/大阪府箕面市】

 5月25日、大阪地裁で、医療法人神明会に対する介護職員不払い残業代裁判の第1回弁論があった。

 法廷からあふれた支援者が見守る中、なかまユニオン神明会ラ・アケソニア分会責任者の渋谷国彦さんが、提訴理由と介護にかける思いを堂々と意見陳述した。

寄り添う介護に誇り

 「80歳のAさんは脳梗塞で歩行できず、言葉をほぼ失い、失意でリハビリせず、イライラして毎日を送っていました。私たちはAさんの歴史をたどり、福祉に携わり、ゴルフ・野球で活躍し、阪神の大ファンの“秘めた力”に気づきました。Aさんに、甲子園球場で応援するためのリハビリと奥さんへ『ありがとう』を伝える発声練習を提案しました。甲子園球場でのAさんの笑顔と奥さんからの感謝の言葉が、施設全員の宝物となりました。利用者・家族の人生に寄り添うことが私たちの誇りです」

 現在のひどい職場では到底実践できない。だからこそ誇りある介護ができる職場に変えたい思いは切実だ。

 「私たちは、地域社会の介護を支えうる施設にすることをめざしています。そのためには、サービス残業で苦しむような労働環境は改善されなければなりません。現職10名と地域の介護施設で働き続ける元職6名。合わせて16名が請求当事者であることの意味合いです」

 安心して働ける施設に変わらない限り、地域の方には受け入れてもらえない。これは、介護労働者として当たり前の闘いだ。

訴訟勝利をめざす交流会

 当日の夜、職場近くの会館で「取り戻そう!未払い賃金 築こう!安心して働ける介護施設 訴訟勝利をめざす交流会」が行われた。分会員と地域の支援者、なかまユニオン組合員が参加。

 代理人の櫻井聡弁護士が、残業代に加え、労働基準法に違反して残業代等をきちんと支払わなかったことに対する使用者への制裁として全原告が「付加金」も請求していることを説明した。

 交流で組合員から「Aさんの話を聞いて、昔はそんな実践ができたんだと、現状を思い、悲しくなってしまった」「少し前はレクリエーションもできたけれど、職員の入れ替わりが激しく、今は日常の動作をこなすので精いっぱい。最低賃金ギリギリではなく、法人には対応をもっと考えてもらいたい」と切実な声が上がる。

 支援者は「介護労働者が集団で提訴されたことに希望を感じました。全面的に支援していきます」など応援の言葉。中西とも子箕面(みのお)市議と稲木睦子総がかり行動実行委員が、激励と連帯のあいさつを送った。

介護職場を変える支援を

 最後に、井手窪啓一なかまユニオン委員長が組合員を中心に呼びかけた。「利用者を思って一生懸命働いていることがよくわかり、それができない現実をなんとかしたいという怒りに、改めて感銘を受けました。これは利用者第一に働ける環境をつくるための裁判。そういう考えを職場に広げたい。元ラ・アケソニアの方も含め、地元とつながっていく裁判にしたい。現職組合員の方には、月1回の組合ニュースを朝の始業前に撒く時に、たとえ10分でも協力をお願いしたい」

 *   *   *

 第2回弁論は7月6日11時30分から大阪地裁404号法廷 介護労働者の未来を切り開く裁判に、大きな支援が求められている。

介護職員不払い残業代裁判

 大阪府箕面市にある介護施設で働くなかまユニオン神明会ラ・アケソニア分会の組合員16人が、約6000万円の未払い賃金支払いを求め1月18日に大阪地裁へ提訴。▽事前に上司が認めた時間だけが時間外労働として計算され、必要な残業をしても残業手当が支払われない▽着替えの時間が労働時間に含まれない▽15分以下の時間外労働が切り捨てて計算された―など、労働者への不利益取り扱いの是正を求めている。



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