2023年06月16日 1776号

【ドクター/インフルエンザに変わったわけではないのに】

 行楽地や繁華街では新型コロナはまるで過去の出来事のようです。しかし、医療現場はそうはいきません。5類に分類されても、コロナがインフルエンザに変わったわけではありません。

 インフルエンザの死亡人数は2019年までの10年間平均で1785人、最大3575人。対して、新型コロナは、軽いとされたオミクロン株で昨年3万9千人の死者を出しています。

 だからこそ、「コロナ対策」に77兆円もの予算を使ったのではなかったのでしょうか。幸いまだ昨年のような大きな波は来ていませんが、欧米と比べて流行が遅かった日本などでこのまま収まるかは不明です。

 コロナで露呈したのは、公衆衛生機関(保健所など)の機能不全、病院のパンクでした。多くのコロナ患者が入院できず、第8波では、高齢者施設で87%が早期の入院ができませんでした。そのあおりで、他の病気も救急患者などの入院・治療が困難になりました。まずはそれらを改革すべきなのに、逆に保健所の合理化を推進しその多くの役割を一般医療機関に回しました。コロナ患者の在宅指導や入院斡旋(あっせん)も多くの病院と交渉しなければならず、診療はストップ、機能マヒはより早く出現します。

 また、ウイルスの性質は全く変わっていないのに、患者隔離が7日から5日に、濃厚接触者の観察期間5日間を「なし」にしました。

 病院ではICUなど重症や救急医療のコロナ患者治療への追加料金を半分にするなど、大幅な収入減になります。もちろん外来報酬も引き下げられています。コロナ患者を受け入れる病院は激減しそうです。コロナ検査は、公費負担から健康保険負担になり、患者負担が増えて検査をしない方も増え、コロナの発生状況は一層不明になります。

 一方、大盤振る舞いも。コロナ治療薬は、効果なく危険なゾコーバも含め公費負担を継続します。有り余るほど国が買い上げているからかもしれません。

 今後、コロナの流行がないと考えているのなら、流行を防げず効果以上の多大な害作用データが出てきたコロナワクチンを、生後6か月の子どもにまで接種の「努力義務」をつけるのは変です。巨大製薬企業の利益は死守するつもりです。

 全体としてコロナ対策費は大幅削減です。政府はそれを大軍拡に回そうとしていますが、本来の医療・福祉充実に回すべきものです。

   (筆者は小児科医)
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