2023年06月16日 1776号

【みるよむ(658)/2023年5月20日配信/まともな年金を払え!/イラクの年金受給者デモ】

 イラクでは定年退職した労働者が年金の未払いや低い年金金額に苦しんでいる。2023年4月、年金受給者がデモを組織し政府の年金政策に抗議の声を上げた。

 バグダッドのグリーンゾーンは政府官庁や議会が集中する政治の中心地だ。その前で数百人の年金受給者たちがデモ行進を展開した。

 ある市民は「年金法の不公平のために、年金給付のない70歳になってしまった」というプラカードを掲げる。長年まじめに働いていても、年金が支給されないという不公正がまかり通っているのだ。デモ参加者の一人は「退職者の要求に応えないのなら、そんな政府は打倒しよう」「そんな政府は非合法だ」と厳しく批判する。

 年金を受給できても1か月40万ディナール(約4万円)。1日当たり1300円程度にすぎない。これではとてもまともに暮らせない。参加者は80万ディナール(約8万円)への引き上げを要求している。

 ところが政府は、年金生活者たちの必死の訴えに対し、治安部隊がデモ参加者を殴り、侮辱することで応えた。参加者は「政府の指導者たちは国を破壊し、国を盗み、不当な生き方をしてきた。この国を支配する資格はない」と糾弾する。

市民は黙っていない

 市民は「ハルブーシ国会議長とスダーニ首相、アブデル・ラティーフ大統領が手を染めている国家の不正。それをなくすために協力しなければならない」と訴える。「不当な法律に対して、立ち止まることなく、黙っていることもない」と言う。印象的な言葉だ。

 イラク政府は、石油輸出収入などで年金財源を確保できる。ところがグローバル資本の利益と汚職にしか資金が回っていない。サナテレビは、年金の引き上げと支給を要求する人々の声を伝え、この社会構造を変えようという意識を高めようとしている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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