2023年06月16日 1776号

【入管法審議 デマ連発の梅村議員/「支援者攻撃」は維新の本性/差別をあおり、自らの養分に】

 入管施設で亡くなったスリランカ人女性へのデマ発言をくり返した梅村みずほ参院議員に対し、所属する日本維新の会が処分を下した。典型的な「トカゲの尻尾切り」にごまかされてはならない。一連の梅村発言には維新の本質が詰まっているのである。

あわてて処分したが

 一連の経緯をおさらいしておこう。入管難民法改定案が参議院本会議で審議入りした5月12日、代表質問に立った梅村議員は、2021年に名古屋出入国在留管理局で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの事例に触れ、こう述べた。

 「支援者の一言がウィシュマさんに『病気になれば仮釈放してもらえる』という淡い期待を抱かせ、医師から詐病の可能性を指摘される状況につながった恐れも否定できない」。念のために補足すると、正しくは仮放免。外国人被収容者は刑事施設にいる受刑者ではないので、仮釈放と表現するのはおかしい。

 さて、梅村は参院法務委員会での質疑でも「ハンガーストライキによる体調不良で亡くなったかもしれない」といった発言を連発。18日の同委員会では自身の「宗教2世」としての体験を唐突に語り出し、「優しき者が正しき者とは限りません」と力説した。

 泣く、怒鳴る、逆ギレする――国会中継を観た方なら誰もが梅村のことを「この人、ヤバいよ」と感じたことであろう。あわてた維新執行部は梅村を法務委員会から更迭し、6か月の党員資格停止処分を下した。「党の指示を聞かずに、自分の判断で質疑に立った。ガバナンスを拒否した」(藤田文武幹事長)ことが処分の理由だという。

 しかし、ヤバいのは梅村だけではない。彼女がこだわった「支援者攻撃」は、維新が得意とする「既得権益」バッシングの延長線上にあるからだ。

「党の問題意識」だった

 そもそも参院本会議での梅村発言は党を代表した質問の中で行われたものである。音喜多駿(おときたしゅん)政調会長もチェック済と認めており、当初は「問題提起として間違ったことをしたとは思っていない」と述べていた。

 その音喜多は梅村に替わって出席した23日の法務委員会で、難民審査参与員の経験がある参考人にこんな質問を投げかけている。いわく「我が党が課題意識を持っている被収容者と支援団体との関わり方について、社会と被収容者との摩擦を引き起こしかねない支援団体や内容が入管行政の現場に存在することを耳にされたことがあるでしょうか」

 支援団体のあり方を問題視する質問の趣旨は梅村と同じだ。幹事長の藤田も「支援者のあり方への問題提起は党として持っている」と述べている。つまり「支援者攻撃」は、維新が入管法改定にからめて最も主張したい部分なのだ。

既得権叩きの一種

 梅村は国会質問で「虚偽DV」という言葉をたびたび用いてきた。「本当はDV(ドメスティック・バイオレンス。配偶者などから振るわれる暴力のこと)などなかったのに、あったと嘘をつく人がいる」と、問題提起したかったようである。「弱者を疑え」と言わんばかりの発想。ここに今回の発言との同質性を見てとれないだろうか。

 すなわち「世の中には弱者のふりをして行政から不当な利益を受けている者や、それを手助けする偽善者がいる。一般庶民は奴らにたかられる一方だ」との主張である。そう、生活保護バッシングの同類だ。

 そのような意識から今回の梅村発言を擁護したり、理解を示す維新支持者は少なくない。鈴木宗男参院議員が入管法改定に賛成する立場から「国益なくして人権なし」と発言(5/30参院法務委)した際には、ヤフーニュースのコメント欄に賛同意見が殺到した。

 「納税もせずに権利や保障もない(外国人)行方不明者に、国民の納税が使われている」「不法入国者の人権のために日本国民の生命財産が危険にさらされるのは真っ平御免」「法により社会秩序を守るべきはずの職にある者(弁護士)が、法の抜け目を突いて社会秩序を乱しかねない行為に加担するというのは、どう考えても倫理に反すると思うのだが」等々。

 こうした意見の根底には「自分たちは守られていない」という強烈な不満がある。そんな中、維新は「既得権益」を激しく攻撃し、「普通の人びと」に分配せよと訴えることで支持を得てきた。実際、行政を掌握した大阪では社会的弱者を対象にした公共支出を容赦なくカットした。

 生活苦にあえぐ人びとの負の感情(ねたみ、そねみ、差別意識)を焚きつけ、自らの養分とする―。維新はそうして成長してきた。梅村は切ったが、胴体(執行部)は何ひとつ反省していない。同じような尻尾が必ずまた生えてくる。(M)

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