2023年06月23日 1777号

【MDS(民主主義的社会主義運動)集会基調報告(要旨)/岸田軍拡に生活守る闘いで変革を】

 岸田政権は「安保3文書」に基づき、敵基地攻撃能力の保有をはじめ、あらゆる分野で軍拡、戦争準備を進めている。この政策との全面的な闘いが生活を守るうえでも、極めて重要な局面になっている。MDS(民主主義的社会主義運動)が6月11日〜18日、各地で開催した集会の基調報告要旨を掲載する(まとめ・見出しは編集部)。

憲法9条違反の軍拡予算

 岸田文雄首相は「反撃能力の保有、南西地域の防衛体制の強化、宇宙・サイバー・電磁波等の新領域への対応や継戦能力の強化。いずれも待ったなしの課題」(3/26防衛大卒業式)と宣言。「(自衛力の)具体的な限度はその時々の国際情勢や科学技術等の諸条件によって左右される相対的な面を有する」(3/6衆院予算委員会)と敵基地攻撃能力保持を正当化した。

 だが阪田雅裕元内閣法制局長官は「攻撃的兵器を日常的に保持するのは憲法9条2項の『戦力不保持』に反する。だから攻撃的兵器はもてないとずっと言ってきた」(4/30しんぶん赤旗)と指摘する。権力側にいた人でさえ憲法9条違反であるという敵基地攻撃能力を岸田政権は持つのである。

 5年間で43兆円にするという軍事費財源を巡って支配階級の間に意見の分岐がある。増税への反発で、軍拡が否定されることを恐れた勢力が、国債発行を主張した。特に自民党安倍派の議員たちだ。他方「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(2022年11月21日報告書)は「国を守るのは国民全体の課題」とし「幅広い税目による税負担が必要」と主張する。国民に対し明確に軍事費負担を迫っていくべきだというのである。

 結局、(1)歳出改革1兆円強(2)決算剰余金の活用0・7兆円(3)防衛力強化資金0・9兆円(4)増税1兆円だと岸田は示した。加えて自衛隊舎整備や護衛艦の建造費など4343億円を建設国債で賄う。公共事業以外で建設国債を発行するのは重大な方針転換である。

 このような財源調達は国債発行も増税も見える形ではしたくないとの岸田政権、財務省の意思である。


全国で基地強靭化

 岸田軍拡の焦点は沖縄・琉球弧(南西諸島)での自衛隊基地徹底強化である。

 浜田靖一防衛相は陸上自衛隊石垣駐屯地開設記念式典で「南西地域の防衛態勢の強化は我が国を守り抜く決意の表れだ」(4/4毎日新聞)と述べた。馬毛島(まげしま)で基地建設が開始された1月12日、日米安全保障協議委員会は「空母艦載機着陸訓練などに使用される馬毛島における自衛隊施設の整備の進展及び将来の見通しを歓迎」と評価した。

 基地強化は沖縄だけではない。「防衛力整備計画」は「既存施設の更新に際しては、爆発物、核・生物・化学兵器、電磁波、ゲリラ攻撃等に対する防護性能を付与するものとし、施設の機能・重要度に応じた構造強化、離隔距離確保のための再配置、集約化等を実施する」という。

 主要司令部棟の地下化をはじめ、全国293地区2万3000棟の強靭化のためのマスタープランを作成する。弾薬庫は10年で130棟、27年までに70棟を整備する。

軍需産業支援

 軍需産業を支援するため法律をつくった。生産基盤の維持強化、輸出支援、金融支援、秘密保全、国有化まで打ち出し、戦前の砲兵工廠(こうしょう)、海軍工廠という軍直轄の軍需工場を作ることまで想定している。

 「国家安全保障戦略」は「我が国の防衛生産・技術基盤は、いわば防衛力そのものと位置付けられるものであることから、その強化は必要不可欠である」と述べている。さらに、「防衛装備移転3原則(紛争当事国への移転禁止/日本の安全保障に資する場合認める/第3国への移転への日本の同意)」を変更して武器輸出を進めようとしている。

 「(制約を取り除き)日本の優れた装備品などを積極的に他国に移転できるようにするなど防衛産業が行う投資を回収できるようにし、少なくとも防衛産業を持続可能なものとしなければならない」(有識者会議報告書)。海外に市場を広げよ、と輸出制限の撤廃を求めている。自公両党は運用指針改定の協議を開始。ウクライナに100台自衛隊車両提供を決定している。

 岸田政権は軍拡を進めるために軍需産業育成強化の露骨な方針を取り、グローバル資本に大きな利益をもたらそうとしているのだ。

軍拡路線がもたらすもの

 岸田の軍拡路線は市民生活の破壊をもたらす。

 23年度の社会保障費自然増分を2200億円削減する。公的年金を0・4%引き下げ、協会けんぽへの国庫補助金を削減。財政制度審議会は、75歳以上の医療費窓口負担を一部2割負担から原則2割負担とするよう建議した(5/29)。介護保険についても2割負担の拡大を示した。少子化対策について「財源負担をこれから生まれる子供たちの世代に先送りすることは本末転倒」として、窓口負担アップ、医療保険への上乗せ負担を提言。保険料を目的以外に使うことはそれこそ本末転倒であり認めるわけにはいかない。

 文教関係予算は162億円減、教職員定数が3302人減らされた。消費者物価4月3・4%上昇、3月の実質賃金2・9%減だ。


国際連帯で平和をつくる

 まず第1に日米韓軍事同盟を進める岸田、バイデン、尹錫悦(ユンソンニョル)の各政権に対する闘いで、日米韓の平和をもとめる市民の連帯を強めることである。現在進められているZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)はその連帯活動の一つだ。

 朝鮮半島終戦平和キャンペーンも韓国、日本など世界の平和団体が朝鮮戦争の終結とアジアにおける平和の確立を目指し進めている運動である。日米韓の市民の連帯した平和を求める闘いがグローバル資本による軍拡、戦争路線を阻止し、平和を作り出していく展望である。

 第2に「台湾有事」の最前線として異常な戦争準備が進められている沖縄の平和を求める市民と連帯し闘うことを徹底して強化することが必要である。

 「島々を戦場にしないで!沖縄を平和発信の場にしよう!5・21平和集会」には若い世代も含めて2100人が参加した。先島における自衛隊基地強化に対し、新たな県民組織をつくり闘いを進めようとしている。

 第3に全国で進められている軍拡に反対する闘いをつくり、強化していこう。基地強靭化など全国で戦争準備がこれから進められていく。それに対し各地で闘うことが必要である。

 第4に、軍拡のもたらす生活破壊に対し闘うことである。軍拡財源確保のために岸田政権は社会保障を切り捨て負担増を進めている。これを許さない闘いを進めていく。市民生活を軍拡、インフレから守るために地方自治体に対しても強く要求する闘いを作り出す。教育費完全無償化を要求し、子どもの医療費無償化を進める。介護保険料の引き上げを阻止し、下げさせる。国民健康保険料を下げさせる。カジノ・万博の無駄な支出を許さず生活改善の財源を取り戻そう。

 軍拡を進める根底にあるグローバル資本を規制し、民主主義的社会主義に前進していこう。
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