2023年06月23日 1777号

【みるよむ(659)2023年5月27日配信/時代に逆行するイラクの大学/#NO ヒジャブの強制着用】

 今イラクの大学では、女性にヒジャブ(スカーフ)着用を義務付け、制服と髪型を強制するなど、時代に逆行した管理が進んでいる。2023年4月、サナテレビはこのような教育の反動化について報道した。

 イラクは千数百年前から先進的な学問研究の歴史を持ち、20世紀初頭には、中東地域で初めてとなる近代的な大学を設立している。

 しかし、現在の状況は違う。「2003年のイラク占領以降、イラクの大学は財政と行政の腐敗の温床となった」。利権と権力による大学の支配は深刻だ。

 SNS上では、中部カルバラのアルフダ校で「法定年齢以下の少女に強制的にヒジャブを着用させることがまかり通っている」と暴かれた。「#NO ヒジャブの強制着用」といったハッシュタグも登場している。

 女性に対し髪の毛を見せないように覆わせるヒジャブの強制は、イラク各地の大学で行われている。中部のクーファ大学では「副学長が化粧をした学生を屈辱的な方法で教室から追い出した」という。大学には「化粧箱は使用禁止」の掲示が掲げられている。

 「空いている場所で男女が一緒に座ることを防ぐよう命令」が出され、「不道徳な行為が起こらないように、学生が木の下に座れないよう木を伐採する学部もある」。実際に、工事用車両で木を撤去している映像まで登場する。

宗教支配で学生を統制

 映像の最後に、イスラム私兵組織出身の高等教育大臣と、その私兵組織の指導者が並ぶ場面がある。それは、イラクの高等教育の現状を象徴的に示している。

 イラクの大学で進む復古的な学生への統制と管理は、イスラム主義勢力が支配する政府の政策である。宗教支配によって市民・学生を統制しようとしているのだ。サナテレビは、このような管理支配と自由の抑圧に反対しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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