2023年06月30日 1778号

【読書室/高校無償化問題が問いかけるもの 朝鮮学校問題2/朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会記録編集委員会編 花伝社 1200円(税込1320円)/行政の排外主義に抗した闘いの記録】

 高校授業料の無償化は、2010年に始まった。現在では当たり前の制度となっている。法的には自動車教習所などの「各種学校」と同じ扱いとされる「外国人学校」も、たとえばアメリカンスクールや中華学校などは無償化の対象だ。

 だが、ここから排除された生徒がいる。朝鮮学校(朝鮮高級学校)の生徒である。拉致問題などを理由に、教育上の観点を無視した対応がなされた。朝鮮学校に通う生徒は高校生ではない、という扱いなのだ。

 朝鮮学校への無償化適用は、当初「外交上も配慮ではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」と基準と手続きが定められた。にもかかわらず政治的排除が強行されたのだ。

 これに対して13、14年、生徒たちが大阪、愛知、広島、福岡、東京で提訴した。東京訴訟は17年に最高裁での敗訴が決まった。他の4か所の提訴もすべて最高裁で敗訴となっている。

 唯一大阪のみが地裁判決で勝利をかちとった。大阪地裁判決は、政治的・外交的理由から無償化排除となったことに向き合う。文部科学大臣の裁量権を限定し、排除を違法と断じ、民族教育の正当性を認めた。その意義はきわめて大きい。

 拉致問題にかこつけて差別と分断が他の制度でも行われている。自治体からの補助金停止、幼保無償化からの除外、学校へのコロナ対策補助除外、さいたま市のマスク不配布などである。

 しかし、何度もの国連勧告もあり、何より生徒、親、支援の市民の闘いが続き、幼保無償化では風穴をあけた。自治体委託型の支援事業が作られ、幼保無償化の対象となったのだ。

 本書は、そうした裁判や闘いの記録である。(I)
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