2023年07月07日 1779号

【軍事優先政治が民主主義を否定/自衛隊 核攻撃にも耐える基地改造/沖縄とともに全国から基地撤去を】

 「戦後最悪」と評される今国会。中でも、人権侵害(入管法、LGBT法)と軍拡(軍拡財源確保法、軍需産業育成法)がセットで強行されたことは、象徴的だ。岸田政権下で急速に進行する「戦争する国づくり」の証しだからだ。国会請願を踏み潰し、沖縄・琉球弧をはじめ全国各地で自衛隊基地の増強に突き進む岸田政権を打倒する闘いがより重要になっている。平和と民主主義をめざす運動をさらに広げよう。

沖縄 慰霊の日

 最悪国会閉会2日後の6月23日。沖縄「慰霊の日」。78年前、日米両軍による凄惨な戦闘の末、沖縄で日本軍現地司令官が自決、軍組織を維持できなくなった日だ。兵士は投降することも許されず、無益な抵抗を続け、住民を巻き込み犠牲を重ねていった。戦後も沖縄は「基地あるが故の犠牲」を重ねている。

 県民の4人に1人が犠牲となった沖縄県はこの日を休日にし、毎年全戦没者追悼式を行ない、不戦を誓う。悲惨な戦争体験の継承の場となっている。今年の平和宣言で玉城デニー知事は、岸田政権が改定した軍事3文書に記述された沖縄での軍備増強に触れ、「苛烈な地上戦の記憶と相まって、県民の間に大きな不安を生じさせて」いると指摘。「対話による平和外交が求められている」と琉球弧へのミサイル配備などを批判した。

 式典に出席した岸田文雄首相は「戦争の惨禍を二度と繰り返さない強い決意」とあいさつ文に入れたが、岸田のことばはその場限りのもの。いつもの通りだ。在沖縄米軍基地について「基地負担の軽減に全力で取り組んでいく」と言っても実体はない。むしろ、米軍基地を増強する辺野古新基地建設を強行し、さらに自衛隊が共同利用まで考えている。

 この新基地建設は現在、沖縄防衛局が大浦湾の埋め立て工法の変更を県に申請しているが、承認が得られていない。環境を破壊し、地震に耐えうる構造物ではないと指摘されたままだ。ところが沖縄防衛局は4月28日、土砂100万立方bの仮置き工事の入札を公告(開札予定日7/20)。「大浦湾側の埋め立て用」だった(6/16浜田靖一防衛相記者会見)。係争中とはいえ、県が不承認とした判断は生きている。当然、承認されていない工事を発注することは許されない。玉城知事は「工事(手続き)を即中断し、県と話し合ってほしい」と要請しているが、政府は「当初の承認工事の範囲内」と聞く耳を持たない。

国会請願を無視

 民意を尊重せず、法の定めさえ守らないのは、軍隊優先の先軍政治≠サのものだ。憲法に保障された請願を審議さえしないのは、民主主義の否定と言える。

 「辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議」が呼びかけた「辺野古新基地建設断念を求める国会請願書名」は4か月で約56万筆が集まり、衆参両院に提出された(本紙1777号既報)。だが取り扱った衆院安全保障委員会の理事会は6月21日、委員会審議は行わないと決定した。56万筆の署名をなかったことにしたのだ。

 請願は憲法第16条に規定された市民の権利だ。衆議院は「委員会は付託された請願について審査を行い」とその取り扱い手続きを定めている。しかし、委員会の運営を協議する理事会の段階で、自民、公明、維新が反対、国民が保留、賛成は立憲と共産のみ。全会一致で賛成とならない請願は委員会で審査しない「慣例」なのだという。

 門前払いにあった請願は10年前、沖縄の41すべての市町村長、議会が署名捺印し、オスプレイ配備撤回、普天間飛行場撤去、県内移設断念を求めた「建白書」が放置されていることから、あらためて県民の民意を尊重した議論を国会に求めたものだった。普天間飛行場の辺野古「移転」は閣議で決めただけだ。この決定を国会で審議せよという真っ当な要求に対し、その内容に立ち入ることなく葬った。好戦勢力にとって、「二度と戦場にはさせない。外交で平和を」という沖縄の民意は邪魔なのである。

市民の犠牲 無頓着

 沖縄の民意だけが踏みつけられるのではない。政府は、日本全国の300か所におよぶ自衛隊基地を強靭化≠キる。ここでも民意を聞こうとはしないだろう。しかし、この点にこそ闘いを拡げるチャンスがある。



 基地強靭化の目的は「攻撃されても粘り強く闘うため」だという。どんな攻撃を想定しているのか。生物、化学や核兵器による攻撃など、あらゆる事態に基地機能を維持できるようにしようと考えている。この想定がいかに荒唐無稽か。ほとんどの基地は住宅地近くにある。攻撃を受けた時、基地周辺がどんな状態になっているのか、軍隊は頓着しない。

 参院決算委員会(4/24)で共産党吉良よし子議員が自衛隊府中基地の電磁パルス攻撃対策についてただした。電磁パルス攻撃とは、高高度(上空30`b〜400`b)での核爆発で強力なパルス状の電磁波を発生させ、電子機器を損傷・破壊する攻撃である。被害は爆発高度により半径600`b〜2000`bにも及ぶという。防衛省はその対策費を今年度予算に計上しながら、「軍事情報」を理由に府中基地が対象となっていることを認めなかった。府中基地上空で核爆発があれば、自衛隊基地が守られたとしても、被害は日本列島全域に及ぶ。

自治体に情報開示を

 政府は5年間で4兆円をかけて全国にある自衛隊施設2万3000棟をリニューアルする。今年度予算には、すべての施設の強靭化マスタープラン作成費が計上されている。施設はどんな攻撃を想定しているのか、一つ一つ明らかにさせることは重要だ。基地周辺の市民がどんな攻撃にさらされることになるのかを知ることになるからだ。「軍事情報」だとして隠ぺいさせてはならない。「軍隊による備え」とは、市民を守るためのものではないことを明らかにできる。





 政府防衛省は、住民には説明しなくても「地元自治体に情報を提供している」と答えている。有事の際の国民保護計画作成は自治体の役割になっているからだ。自治体が知らないではすまされない。自治体に情報開示を求めることの意義は大きい。戦争準備に加担させないためにも重要な取り組みとなる。政府・防衛省への要請とともに、自治体への要請を強める必要がある。

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 沖縄に基地が集中したのは、1960年代に全国各地で起こった反基地闘争を鎮静化させようと日米政府が沖縄に基地を移転させたからだった。60年代前半、沖縄とそれ以外の米軍基地の負担割合は1対9。それが今では7対3となっている。だからこそ、沖縄の粘り強い基地反対の闘いに連帯し、軍拡阻止、基地撤去の運動を全国で拡げる必要がある。
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