2023年07月07日 1779号

【住まいの権利裁判第5回口頭弁論/福島県の人権侵害と闘いぬく/原告遺族が訴訟を承継】

 国家公務員住宅に住む11世帯が福島県の不当な追い出しと闘っている「原発事故避難者住まいの権利裁判」の第5回口頭弁論が6月19日、東京地裁であった。主な争点は、2017年3月の区域外避難者への住宅無償提供打ち切り、その後の追い出しのための嫌がらせの違法性だ。

 光前(こうぜん)幸一弁護士が「福島県は代替措置もとっていない。親族らに郵送した文書は、違法に住所を調査し、内容も脅しにあたるもの」と親族を巻き込む人権侵害を批判。柳原敏夫弁護士は「自然災害と異なる原発災害に対応した避難者住宅提供の国内法はない。法の欠缺(けんけつ)状態では、上位法の国際人権法に準じるのが筋だ」と違法性を主張した。

 県側は書面提出のみ。打ち切りの根拠については、国との協議内容を隠した一般的な状況説明でお茶を濁した。裁判官が再度十数項目にわたって求釈明。次回10月2日、県側の弁明に原告側が反論を提出する。

 報告会で井戸謙一弁護団長は「進行協議をすべて公開の法廷で行い、市民が監視できることはいい。根幹の問題である県の打ち切りの理由は薄っぺらいものでしかなく、行政の裁量範囲の逸脱、乱用だ。国内避難民の指導原則に照らして違法」と述べた。

 原告からは「緊急連絡先にした姉はその後、引っ越し。県は転居先の住所まで調べて文書を送った。許せない」「緊急連絡先でもない実母に文書が送られていた。親子関係も顧みない暴挙だ」と怒りが表明された。原告の一人は47歳で急逝したが、母親が承継を決意している。古川(こがわ)健三弁護士は「負担を背負いながらも息子の無念を晴らそうとされた決意に弁護士として応えなければ」と絶句した。

 ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)の武藤類子代表や損害賠償集団訴訟を闘う京都の原告らも参加した。「避難の権利」を求める全国避難者の会・大賀あや子さんは「法廷を埋めて後押しせねばならない。多くの人が傍聴するよう頑張りましょう」と訴えた。

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