2023年07月14日 1780号

【1780号主張 マイナトラブルで制度の根幹揺らぐ 保険証廃止 カード義務化の阻止は可能だ】

法強行するも大混乱

 6月2日、岸田政権は来年秋の健康保険証の廃止を柱とするマイナンバー関連法を強行成立させた。その後のマイナカードをめぐる大混乱は後を絶たない。

 証明書コンビニ交付での誤発行、マイナポイントの他人への誤交付、公金口座の誤登録、マイナ保険証使用で無効と表示され医療費「10割負担」の事例が約1300件、他人の情報のひも付け事例は7300件超と、あげればきりがない。しかもそれは氷山の一角だ。

 この事態に岸田首相は「マイナンバー情報総点検本部」を設置し総点検を指示。しかし、その点検もデジタル庁が決める「リスクの高い事項」に限り、証明書の誤交付などは対象外でやってる感≠フ演出にすぎない。厚生労働省は「無保険扱い」を防ぐため従来の健康保険証も一緒に持参するよう呼びかける始末(6/29)。マイナ保険証の「信頼」が地に落ちた証明だ。

制度設計もでたらめ

 マイナカードの大混乱は極めて重大な事故や情報漏洩(ろうえい)であり、マイナンバー制度の構造的欠陥が表面化したものだ。政府の言う「自治体や業者の処理のヒューマンエラー」ではない。

 2兆円を超えるマイナポイントをいわば餌(えさ)≠ノカード普及を推進し、個人情報保護より利活用を優先させる強引な政策が原因だ。

 他人の医療情報ひも付けによる誤った診断や薬の処方で健康被害すら生じる可能性が高まった。マイナ保険証の申請、管理に困難を抱える施設入所者等や障がい者への対策は、昨年9月の保険証廃止発表以降「検討中」のままだ。カードを持たない人の資格確認書は申請しないと受け取れず、国民皆保険制度に穴が開く。

 こうした欠陥だらけのマイナカードに、政府は運転免許証や母子健康手帳、在留カードなどと一体化を進める方針だ。でたらめな制度の下でのマイナ保険証強制は撤回しかない。

世論広げ自治体行動を

 共同通信世論調査(6/17〜6/18)では、マイナンバー制度への不安が71%、健康保険証廃止反対は72%と世論は明らかだ。岸田は「保険証全面廃止は国民の不安払拭が大前提」(6/21)と言わざるを得ず、政権内部から廃止見直し論が出始めた。マイナカード自主返納は広島市で5〜6月107件(6/23中国新聞)をはじめ全国で激増。SNSでも返納運動≠ェ広がる。

 保険証廃止・カード義務化阻止は可能だ。自治体に対し「マイナンバー事務を一時停止し総点検を/カード作成リスクや返納手続き明示を/マイナひも付け口座を公金振込に使うな/政府に健康保険証廃止の中止を求めよ」と行動を起こそう。法制定以降も東京都八王子市、神奈川県座間市議会は保険証廃止反対意見書を採択した。自治体意見書運動に取り組もう。

(7月2日)
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