2023年07月14日 1780号

【コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)声明【要旨】/インド太平洋地域に分断と緊張激化もたらす/開発協力大綱の撤回を求める】

 政府の新たな「開発協力大綱」(「大綱」)が6月9日閣議決定された。コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)は撤回を求め声明を発した。その要旨(まとめは編集部)を紹介する。

 コアネットは、次の通り「大綱」の撤回を求める。

 安全保障に関する最上位の政策文書となる「国家安全保障戦略」(「戦略」)の狙いを確認しておこう。冒頭で「国際社会は時代を画する変化に直面」とし、「外交、防衛、経済安全保障、技術、サイバー、海洋、宇宙、情報、政府開発援助(ODA)、エネルギー等の我が国の安全保障に関連する分野の諸政策に戦略的な指針を与える」とする。ロシアと中国の台頭に対抗できなくなった現状を念頭に「グローバリゼーションと相互依存のみによって国際社会の平和と発展は保証されないこと」に言及せざるをえなくなっている。いわゆる「多極化」の流れに抗しつつ、日本の安全保障戦略を再確認したのである。

 この情勢評価のもとで、「戦略」は対象地域を「アジア太平洋」(前戦略2013年)から「インド太平洋」へと大幅に拡張した。そして、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」ビジョンの下、「同盟国・同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和と安定を確保していくことは、わが国の安全保障にとって死活的に重要」と規定する。


ODA格上げ

 この基本原則から「ODAを始めとする国際協力の戦略的な活用」として、(1)質の高いインフラ、人材育成等による連結性、海洋安全保障、法の支配、経済安全保障等の強化のための支援による開発途上国等との信頼・協力関係を強化(2)FOIPビジョンに賛同する幅広い国際社会のパートナーとの協力(3)我が国企業の海外展開の支援やODAとODA以外の公的資金との連携強化などの方針を提示した。こうして「戦略」は、前戦略よりODAの位置づけを格上げした。

 「大綱」は「戦略」の方針を踏まえ、「我が国の外交の最も重要なツールの一つである開発協力を一層効果的・戦略的に活用する」として方針を具体化した。「大綱」の目玉方針として打ち出されたのが「オファー型協力」の強化である。

 これは「相手国からの要請を待つだけでなく…ODAとOOF(ODA以外の政府資金)等様々なスキームを組み合わせて相乗効果を高め、積極的に提案していくこと」と説明している。

 その意味をあけすけに解説したのが読売新聞(4/4)だ。「『オファー型』導入で提案中心の支援を目指す」「FOIP実現に向け巡視船供与などで途上国の海上保安能力を後押しする方針」「ウクライナ侵略の影響で広がる食料・エネルギー危機への対処を重視する方針」が盛り込まれるとする。「要請主義」が「国益」追求の障害になっており、今後は日本が作成した援助メニューに絞り込んでいくということだ。


「交戦国援助」に道

 結果、「FOIPビジョン」に賛同しない国は援助対象から除外され、援助対象国には日本の国益につながらない援助メニューは提示されない。それはまた、ウクライナ問題を奇貨としながら交戦国に「援助」するなど「一層戦略的・効果的な開発協力を行っていく」(「22年版開発協力白書」)ことでもある。

 この「大綱」に基づくODAが推進されていけば、グローバルサウスの貧困と格差解消のための支援は軽視され、分断と緊張の激化がもたらされる。国民には、「国益」「安全保障」を口実に増税攻撃がかけられてくるであろう。利益を得るのは、援助メニューを作成するコンサルタントやその事業を実施する日本のグローバル企業・支配層だけだ。このような「大綱」方針を認めることはできない。

 コアネットは「大綱」と「戦略」の撤回を要求し、平和と民主主義、平等互恵のインド太平洋地域をめざして闘う国内外のあらゆる個人・団体と連帯して闘っていく。
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS