2023年07月28日 1782号

【コラム見・聞・感/JR尼崎事故18年/参加者にとっての集会の意味とは】

 乗客・運転士107人が犠牲になった2005年のJR福知山線脱線事故から18年。翌2006年から始まった「ノーモア尼崎事故!生命と安全を守る集会」は当初の基本形を維持したまま現在も続く。事故の起きた4月の開催を恒例としているが、統一地方選の年は4月を避けて行われる。7月15日の集会には筆者含む62人が集まった。

 「地域における鉄道の復権」共著者の1人、安藤陽(あきら)埼玉大学名誉教授が「国鉄『分割・民営化』と新自由主義」と題して記念講演。地方切り捨てやJRの安全・サービス低下と国鉄分割民営化の関係を的確にご指摘いただいた。

 国労・藤原浩二さんから、福知山線事故の反省なく今もJR西日本で続く人減らし合理化の実態が報告された。特に、今年1月の大雪による乗客「車内閉じ込め10時間」問題の背景に人員削減があるとの報告には、筆者も1760号本欄で指摘しているだけに我が意を得たりの思いだ。

 運転士交代の際、従来は着発時間(到着から発車の間)が3分以内なら、乗務を終えた運転士が発車までホームで列車を見送っていた。列車からの異臭や異音がないかの確認を兼ねる重要なものだが、JR西日本はこれを着発時間1分以内に縮小したという。新幹線「のぞみ」台車亀裂事故(2017年)は乗務員が台車付近で焦げるような異臭を感じたことで発覚した。このような異常はどんなにハイテク化が進んでも機械では検知できない。その体制を縮小するJR西日本は安全軽視といわれても仕方がない。

 この他、リニア反対、関西生コン弾圧反対、JAL解雇撤回の各当事者から発言があった。JAL争議団の神瀬麻里子さんからは「このような集会が事故から18年後も続いているのは他に例がなく、素晴らしいこと」と発言があった。筆者も同様の思いだ。

 集会後の懇親会では、実行委員会の平田尚さん(国労)が「18年経ってみんな年を取り、集会に来られなくなった人も多いが、新たな顔ぶれも増えている」と報告。国鉄闘争の同窓会感覚の人、JR問題に関心を持ち続ける人など参加の動機はさまざまだ。

 集会は、各参加者が自分なりの意味を見いだす新たな段階に入ったようだ。再来年は事故20年。「自分たちが思っているほど世間で事故は風化していない」(平田さん)のは心強い。  (水樹平和)
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