2023年07月28日 1782号

【読書室/国費解剖 知られざる政府予算の病巣/日本経済新聞社編/日経プレミアシリーズ 900円(税込990円)/コロナ予算12兆円はどこへ?】

 昨年4月、日本経済新聞は「コロナ予備費12兆円、使途9割追えず」と報じた。効果の検証ができず国会の審議も経ていないことを示す記事だが、ネット上でも「#消えた11兆円の説明求めます」と反響を呼んだ。

 さらに、コロナ予算そのものの実態が不明である。10万円給付、Go Toトラベル、検査とワクチンなど使われた項目はわかるものの、コロナ禍以前からの人件費や業務費など通常の予算に組み込まれるためだ。加えて、コロナ対策では予備費を膨らませたことも問題を見えなくしている。

 予備費の「活用」は政権に都合がいい。昨年10月に経済対策で29兆円超の補正予算案が閣議決定された。実は財務省原案では25兆円超だったものが、一晩で4兆円も上乗せされた。「コロナ・物価対策予備費」3兆超7400億円、「ウクライナ対応予備費」1兆円等が「今後の備え」の一言で計上されたのだ。

 予備費とは「予見しがたい予算の不足」を見込む例外的なものである。本来であれば、臨時国会を開いて議論すべきだ。ところが、「緊急性」を理由に巨額の予備費の計上が続いている。これは、財政民主主義を弱体化させることでもある。

 国家予算の問題は予備費だけではない。基金、特別会計、コンサルタントへの委託事業などがある。

 例えば200もの基金が作られ、巨額の予算がつぎ込まれている。いったん予算措置されると、その後は国会のチェックが効かない。複数年度での予算執行ができることも問題を含む。

 本書は、これらの問題を徹底して明らかにする。命とくらし優先の予算へと転換を求めていく上でも必要な視点だ。    (I)
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