2023年07月28日 1782号

【避難者住宅追い出し裁判控訴審 即時結審に抗議広げ弁論再開へ】

 原発避難者住宅追い出し裁判で仙台高裁(瀬戸口壯夫〈たけお〉裁判長)は7月10日、開始即時結審の暴挙に出た。

 約40人の傍聴者を背にした意見陳述で原告Aさんは「都営住宅に応募して15回でやっと当選した。就労も福祉も福島県は何一つ支援せず、出て行けを繰り返した」と県の対応を批判。柳原敏夫弁護士は8点の控訴理由を述べ、「県が提訴資格の根拠理由とした『債権者代位権』は賃貸借契約と間違って解釈している」と指摘し、原告適格性を否定した。裁判長は直後に突如「弁論を終結します」と宣言し、抗議の怒号の中退廷。

 子ども脱被ばく裁判原告代表の今野寿美雄さんは「うちの裁判はひどい判決だったが審理は行った。始まってすぐ終了とは何事か」と怒りをぶつけた。

 弁論前の宮城県庁前行動にも高裁前集会にも宮城、福島から多くの支援者がかけつけた。放射能問題支援対策室いずみ(仙台)の服部賢治事務局長は「災害救助法では住宅に困る犠牲者が出る。どこだかの知事(福島県)は“最後の一人まで支援する”と言ってきたがそうではないと知ってもらいたい」。市民立法「チェルノブイリ法日本版」をつくる郡山の会の郷田みほさんは「避難者の住宅を奪うとは人権無視。福島からもっとこの場に来るよう強くならなければと思う」。

 許さない会代表・熊本美彌子さん、かながわ訴訟原告団長の村田弘さんは現地での支援の広がりを訴えた。

行政にすり寄った司法

 怒りが収まらない報告集会で、大口昭彦弁護団長は「行政が原発事故は終わり再稼働だと棄民政策に突進する中、裁判所は三権分立をかなぐり捨て行政にすり寄っている」と裁判官の責任を問う決意を表明した。

 参加者一人一人が発言。住まいの人権裁判共同代表の作家・渡辺一技さんは「最低ですよね。こんなの裁判じゃない。最後まで支援していく」。千葉訴訟支援する会の上野通子さんは「原発事故さえなかったら避難の必要もなかったのに個人責任扱いは許せない」。

 福島からは「本当に悔しい。原発回帰の行政方針が司法に影響した。今日あったことを広める。変えないと日本はダメになる」(ひだんれん・武藤類子代表)「住宅問題で泣き寝入りする人が多くいる。関心のない人、若者にもわかりやすい方法で広げたい」(福島市大町9条の会・宍戸幸子さん)など、決意が続いた。

 宮城からは「住居が失われる理不尽さに怒りがわく。司法は死んだ。周りに広げたい」(民医連)「三権分立ではないことがはっきりした。仙台市選挙で知らせる」(女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション)「原発回帰方針や最高裁判決が影響。判決前にできることをやりたい」(みやぎ脱原発・風の会)「国連人権理事会が問題にしている。国連に裁判の状況を訴えてはどうか」など、市民の怒りが寄せられた。

 弁護団は「審理の終結を撤回し、弁論の再開、国際人権法に基づく真相解明を」求める抗議声明を発した。判決日は9月27日とされたが、弁護団と支援者は抗議の声を宮城で全国で広め、弁論再開をめざす。

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