2023年08月04日 1783号

【新型コロナ第9波/接種後死亡2千人 補償認定100件の異常/医療拡充は放棄 ワクチン一辺倒の無策/医療問題研究会/ 医師 山本英彦】

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症法上の5類移行を前にした4月19日、厚生労働省アドバイザリーボード(専門家会議)で、押谷仁東北大学大学院教授らは「9波に差し掛かりつつある」「死亡者も発生し続ける可能性が高い」との見解を示した。その上で「すべての方を対象とした(ワクチン)接種を実施」「持続可能な感染対策の実施と適切な医療へのアクセス」が必要と指摘した。政府の対応は、感染対策と医療アクセスは全く顧みられることなく、ワクチン接種のみが「対策」とされ、今日に至っている。

すでに第9波突入 全国4万人超(定点のみ)

 コロナ罹患(りかん)数の把握は、5類移行の5月8日、それまでの全数把握から全国指定医療機関約4900か所の週ごとの定点報告に変更された。迅速な対応ができていない政府の怠慢を隠ぺいする効果を発揮している。

 国立感染症研究所による5月第1週からの定点感染症報告をみると、沖縄はすでに流行が急激に増加し、7月3日には第7波の沖縄全県最大1200人を超え3500人に達している。

 第9波は明確である。受診先は個人に委ねられ、一部の医療機関に患者が殺到。行政による感染者の割り振りができていない。沖縄の5月から第26週までの定点観測数と国立感染症研究所の速報データに基づき筆者が推計(図1)したところ、8月1日ころには1万人を超えることも推定される。



 全国を見ても、罹患者は急速な上昇を示し、7月3日には全国合計は4万2000人を超えた。定点以外も含めた全国罹患総数は不明だが、千葉など混乱が報じられている。大混乱が始まっても、国の対策は、個人責任という自宅放置、病院任せ、民間への行政の肩代わり押しつけという6〜8波の無策と変わらない。

 私たち医療問題研究会は、新型コロナ流行の当初から、インフルエンザなどとは全く異なる重篤な疾患として世界の総力をあげた感染対策が必要と認識する一方、コロナワクチンの安全性、有効性評価が巨大製薬資本のデータに頼っていることを問題と指摘し、ワクチン一辺倒の政府の対策に警鐘を鳴らしてきた。

感染拡大防止 重症化阻止 効果なし

 2021年12月から23年1月にかけて、新型コロナの流行は世界中で何波も起こった。多くの国では、ワクチン接種者はすでに60%を超えていたこともあり、積極的な接種拡大方針はとらなかった。

 ところが、日本はワクチン接種拡大一辺倒の方針を続けた。この時期日本では、22年1月から第6波、22年9月から第8波に突入した。新規患者数と初期、ブースター(追加)ワクチン接種回数を示す(図2)のように、人口100人当たり100回を超えるというブースター接種拡大でも罹患の広がりは阻止できなかった。



 22年初頭の第6波以降の流行はオミクロン株が主流のためと理由付けられ、第7波の9月以降、接種はオミクロン対応という二価ワクチンに変わったが、それも過去最大の第8波を防げなかったことは明白だ。

 ワクチンの重症化阻止効果についても見てみよう。

 押谷教授らは、厚労省データから日本の第7波の感染者数は1241万1726名、死亡者数は1万4368名、第8波は感染者数1192万281名中死亡者2万8469名と示す(4/19)。この7〜8波にかけての死亡者の急激な増加の要因について、教授らは(1)感染者数の増加(2)福祉施設・医療機関でのクラスター(3)ワクチンの重症化阻止率の低下の可能性(4)医療ひっ迫で急性疾患に対応できなかったことの関連死(5)超過死亡などを挙げている。

 だが、同会議に出された資料(図3)をみると、日本の第7波以降、日本の死亡率は英国に比べて明らかに高い。日英でウイルス側の要因は変わらない。英国では75歳以上、老人施設入居者、5歳以上の免疫低下者以外はワクチン追加接種はできず、接種率は日本のほうがはるかに高い。



 日英比較からわかることは、死亡者を減らすのにワクチン接種拡大に効果はなく、それ以外の感染対策の違いが大きいか、そうでなければ、むしろワクチンが重症化を深刻にしたとしか言いようがない。

桁違いのワクチン後死亡と補償認定

 日本での新型コロナワクチン接種後報告義務のある製造業者と医療機関からの死亡報告がある。23年4月28日の厚労省「厚生科学審議会副反応検討部会」までで、12歳以上でファイザー1829名、モデルナ224名、タケダ1名、それ以外にファイザー生後6か月から11歳までの4名、計2058名。うち接種との因果関係ありと判定されたのは1名のみで、99・5%は因果関係「評価不能」とされている。これまでも指摘されてきたが、2千名超の接種後死亡は膨大過ぎる。

 一方、コロナワクチン接種後の健康被害者からの請求は、同省「疾病・障害認定審査会感染症・予防接種審査分科会」にあげられている。21年8月から23年7月14日までの累積請求受理8138件(分科会集計)、認定3486件、否認476件、保留180件となっている。審議された死亡例は、筆者の計算では7月14日まで120件。そのうち一時金認定は100件、否認は3件、保留17件であった。

 過去の厚労省の予防接種健康被害救済制度認定者数をみると、1977年2月から21年までの累計で亡くなった人151件に対し補償がなされている。(痘そう42件、インフルエンザ〈臨時〉20件、麻しん〈はしか〉14件、インフルエンザ〈定期〉5件など)

 44年間に行われたすべてのワクチン被害死亡補償認定が151件だったのに対し、新型コロナワクチンの21年8月から23年7月までの2年間だけで100件というのは桁違いの多さだ。十分な安全性試験(治験)をせず多くの死亡者を出したインフルエンザ(臨時)ワクチンと比較しても、驚くべき数の死亡補償請求を政府自身が認定している。しかも、補償請求申請が受理されている約4000件が、いまだ審査―判断をされていないのである。 

  *   *   *

 日本では、政府のコロナ無策の中で、再び医療崩壊が起きかねない状況となっている。必要な予防策、検査と感染隔離、相談・治療先の確保など、対応策を講じなければならない。

 第9波に入った事態を踏まえ、保健所切り捨てや対応病床の削減など行政の責任放棄を許さず、検査・治療の無償再開など国・自治体への要求を強める必要がある。未曽有の副作用が露呈したワクチン一辺倒政策は即刻中止を求め、被害当事者の補償請求を支援するとともに、科学的検証と完全な情報開示を要求しよう。
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