2023年08月04日 1783号

【不当なロックアウト解雇撤回へ 人権侵害と闘うサイネオス争議 首都圏なかまユニオン委員長・伴幸生】

 首都圏なかまユニオンは、6・30東京総行動でけんり総行動実行委員会の仲間とともに、不当なロックアウト解雇(解雇通告しそのまま職場から閉め出す)の撤回等を求めてサイネオス・ヘルス・クリニカル社(以下、サイネオス社)前での抗議行動を行った。同社がS組合員に対して強行したロックアウト解雇は、正当な労働組合活動に対する報復的な解雇でしかない。

「服従」しないと「反抗的」と懲戒から解雇

 2019年、「退職強要」に対し雇用を守るため地域ユニオンに加入したS組合員。2020年、サイネオス社は「S氏には業務命令違反行為がある」とした上で、「S氏の違反行為をK氏が指導教育をすべき立場であったのに、これを怠ったことは明らか」とし、S組合員の上司であったK氏を降格処分した。2021年、S組合員は首都圏なかまユニオンに移籍し、「業務命令違反」とされた問題や労務管理の在り方を団体交渉で解決していく取り組みを開始した。

 しかし、サイネオス社は第1回団体交渉で「S組合員の『業務命令違反』は本人に通知していないため何のことか分からない」という趣旨の回答をした上、「業務命令違反」を「本件不服従」と言い換えてきた。

 2022年5月、K組合員も首都圏なかまユニオンに加入。同社の労務管理、長時間サービス残業、労働基準法に抵触する過半数代表選挙の改善等、団体交渉での追及点が広がり出すと、サイネオス社は不誠実交渉と「業務命令」を悪用した支配介入を繰り返し始めた。

 首都圏なかまユニオンは2023年1月、東京都労働委員会申立を行い、第1回調査期日前に追加申立と実効確保措置申立を行った。都労委係属中にも関わらずサイネオス社は不誠実交渉と支配介入をエスカレートさせ、S組合員に対し、「無断録音」「過剰な質問・要求、反抗的態度、職務範囲を逸脱した言動等による職場内での摩擦の招来」「主観的基準による見境のないパワハラ主張」として24項目の「非違行為」を理由とする「譴責(けんせき)処分」や「厳重注意書」を発出した。ついに2023年6月28日、S組合員へロックアウト解雇を強行した。

 戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏が「個々の人間に服従を強いることが許されるなら、あらゆる理不尽が正当化される」(『この国の同調圧力』)と語っている状況が、サイネオス社の労務管理に重なって見えてきた。

違法を正し、安心して働き続ける職場環境に

 サイネオス社は、製薬企業から委託を受けて、「治験」が適正に行われているかをモニタリングする業務等を行う開発受託のグローバル企業である。

 団体交渉では「ジョブ型雇用」(職務内容を限定した雇用)と回答したが、実態は職位による賃金支払いとなっており、「ジョブ型雇用」と言えるものではない。労働時間管理もビラブル時間(スポンサーに請求可能な労働時間)を増やせと従業員に「圧力」をかける一方で、残業時間が増えると上司から「能力不足」と非難される。

 団体交渉で何度も拒否し、ようやく開示してきた「衛生委員会議事録」から「メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した社員が2022年度に28人(全社員の2・0%)おり、全国平均の0・9%を大きく上回っている」という事実も明らかになった。

 労基署から「労働災害が発生する場合は送検する(刑事事件にする)」という「是正勧告書」も出されたが、同社は団体交渉において不誠実な回答を繰り返し、職場改善を求める組合活動を妨害している。

 従業員に「服従」を迫り、低コスト労働をさせているサイネオス社の人権侵害を止めると同時に解雇撤回の闘いを拡げていく決意だ。



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