2023年08月04日 1783号

【未来への責任(379) 沖縄の遺骨返還請求訴訟】

 2007年9月、「すべての民族が異なることへの権利、自らを異なると考える権利、および異なる者として尊重される権利を有することを承認するとともに、先住民族が他のすべての民族と平等であることを確認」する「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択された。

 2014年、国連の人種差別撤廃委員会は「琉球を先住民族として承認することを検討し、また彼らの権利を保護するための具体的な措置をとること」を勧告した。そして2015年9月には翁長雄志沖縄県知事(当時)が国連人権委員会で民意を無視する日本政府の理不尽な対応について「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください」と訴えた。

 日本政府はアイヌ民族だけを先住民族としているが、国際社会から見てその歴史をたどっていけば琉球=沖縄は「先住民族」に該当する。

 宣言は先住民族の権利について詳細な規定を設けている。

 第3条【自己決定権】は「先住民族は、自己決定の権利を有する。この権利に基づき、先住民族は、自らの政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する」とある。辺野古基地移設強行は「自己決定権」を否定するもの。

 第12条【宗教的伝統と慣習の権利、遺骨の返還】では「1. 先住民族は、自らの精神的および宗教的伝統、慣習、そして儀式を表現し、実践し、発展させ、教育する権利を有し、その宗教的および文化的な遺跡を維持し、保護し、そして私的にそこに立ち入る権利を有し、儀式用具を使用し管理する権利を有し、遺骨の返還に対する権利を有する」と、「遺骨返還」を求めるのは権利と明記した。

 2018年12月、京都大学が戦前、人類学研究として沖縄・今帰仁村(なきじんそん)の百按司墓(むむじゃなばか)から盗掘した26体の遺骨返還を求めた裁判は京都地裁で請求が棄却され現在大阪高裁での審理が山場となっている。

 7月5日第4回口頭弁論では、遺骨の「適正」保管確認の「現場検証」について、京大は検証に代わる保管状況の写真を裁判所に提出した。この日意見陳述に立った原告の金城実さんは「裁判に一回も顔を出さない京大は裁判所を侮辱している。世界各地で先住民族の遺骨の返還が進んでいるにもかかわらず遺骨を物=研究対象としかみない日本の人類学は世界に後れを取っている」と批判。日本の司法が国際的潮流である先住民族の遺骨返還請求権を認めるか否かを鋭く問いかけた。

 次回口頭弁論(8月23日)で結審が予定されている。世界に通用する判決が出されるか、今日本の司法が問われている。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

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