2023年08月11日 1784号

【ZENKO反原発分科会/健康被害、損害賠償、避難者住宅の裁判を 各分野からともに闘う】

 7月30日の反原発分科会では、福島原発事故はなかったかのように原発推進に舵を切った岸田政権に対し、反原発の各分野がばらばらにではなく、お互いの運動を共有しながら政府のアキレス腱を突く闘いを共同して取り組もうと、活発な議論が交わされた。

 第1のテーマは被ばくと健康被害。政府・福島県は20_シーベルト「基準」で避難指示を解除し帰還を強要しているが、放射能による健康被害の実態は何としても隠したい。講演した311子ども甲状腺がん裁判弁護団長・井戸謙一弁護士は「閾(しきい)値がなく甲状腺への被ばく量の実態もわかっていないのに、『100_シーベルト以上の被ばくでないとがんにならないが原告らの被ばく量は10_シーベルト以下』と因果関係を否定するのは根拠がない」と批判。7人の原告を紹介した後「因果関係を争点とする唯一の裁判であり、バッシングの中勇気を奮って立ち上がった若者を支え続けていこう」と呼びかけた。

最高裁判決をくつがえす

 第2のテーマは、国に責任なしとした損害賠償集団訴訟の昨年6月17日の最高裁判決を覆す闘いだ。年内から来年にかけて神奈川、東京、千葉2陣など控訴審判決が集中する。かながわ訴訟原告団長・村田弘さんは「GX法強行、6・17最高裁判決を受け、司法の反動化、メディアの消極性といった予断を許さない現状。控訴審第2波グループの闘いで6・17判決を覆すため、人権裁判、被害者訴訟など様々な取り組みと連帯、共闘していかねばならない」と運動課題を指摘した。

 第3のテーマは、避難者の住宅追い出し。避難生活の基本である住宅を確保すべき行政が避難者を訴えて追い出しを図る人権侵害が起きている。政府・福島県は、個人のわがままとして、問題が大きくなることを極力避けている。原発避難者の住宅追い出しを許さない会代表・熊本美彌子さんは「災害救助法では原発避難者を救えない。提訴された避難者は法がない中での犠牲者で、個人の問題だけでなく法・制度の問題だ」と裁判の意義を訴えた。

 討論では、千葉訴訟、京都訴訟、九州訴訟の原告などから具体的な行動が呼びかけられ、国連人権理事会報告ではセシリア・ヒメネス=ダマリー報告書の活用が訴えられた。また、憲法32条(裁判を受ける権利)違反の控訴審即時結審の暴挙に出た住宅訴訟仙台高裁への抗議要請、福井・高浜1号老朽原発再稼働に抗議するZENKO関電前プロジェクトの取り組み、もんじゅ西村裁判の紹介など、様々な分野の発言がされた。

闘い共有し共同行動へ

 まとめでは今後の方向が提案、確認された。国の責任を明確にした最高裁判決をとりにいく。支援強化期間として各地の控訴審支援、原告団全国連絡会に連帯し署名運動などに参加する。2つの避難者住宅裁判の会員となって傍聴席を埋め、財務省・復興庁交渉で後押しする。子ども甲状腺がん裁判支援の学習会・講演会を各地で開催し、原発放射能の健康被害を広める。老朽原発をはじめ原発再稼働中止、汚染水海洋投棄を止める原子力規制庁・資源エネルギー庁交渉の継続、再生エネ政策への根本的転換を要求する。国連人権理事会報告を活用した国内避難民に関する指導原則の実行を行政交渉で迫る―など。

 参加者は「反原発課題は多く、あれもこれもできないが、それぞれの闘いを聞いて共有することで、自分の役割と共同行動への意欲がわく」と語った。

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