2023年08月11日 1784号

【東電株主代表訴訟控訴審スタート/一審13兆円賠償判決踏まえ経営陣の責任問う】

 東京電力の株主46人が福島原発事故の責任と損害賠償を求めて東電旧経営者5人を訴えた株主代表訴訟の控訴審が7月24日、東京高裁でスタートした。

 昨年7月、一審で東京地裁は日本の裁判史上最高額となる合計13兆3210億円の賠償金支払いを命じている。傍聴席は埋まり、画期的判決への巻き返しを許すまいと、進行を見守った。

 経営陣側は控訴理由で「過去数百年からの経験では想定できない地震。明治三陸地震のマグニチュード8・2とは比較にならない9規模の地震だった」と、大津波襲来の予測不能を繰り返し主張。加害者としての責任が全く感じられない。大半を地震調査研究推進本部の長期評価(2002年)の信頼性否定に費やした。

 株主側の海渡雄一弁護士は、東電刑事裁判などで明らかになった経営陣の予測の認知、現場の対策の議論などを具体的に述べ、「長期評価を知っていながら現場に具体的に指示をせず、対策の引き延ばしをはかったことが重大事故につながった」と責任の重さを訴えた。一審では裁判官が現地調査をしたことを重く見て、今後高裁にも現地調査を求める上申書を上げる。

 原告の浅田正文さんは意見陳述で「原発事故でコミュニティーは損なわれ、国の崩壊にもなりかねない。経営者には次世代への責任や倫理観が基本的に必要ではないか」と述べ、裁判官に「しっかり損害を償うよう命じてほしい」と訴えた。次回は11月1日と決まった。

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