2023年08月11日 1784号

【安すぎる賃料、カジノ業者を優遇/維新による官製談合疑惑/証拠のメールを消したのバレた】

 会場準備の遅れなどの問題が噴出している大阪・関西万博。SNSでは中止を求める声が高まっている。だが、問題は万博だけではない。維新府政・市政が目論むベイエリア開発の本命であるカジノ・IR計画をめぐり、様々な疑惑が浮上しているのだ。

怪しい大幅値引き

 大阪・関西万博の開催地、そしてカジノを中核とするIR(統合型リゾート)の予定地でもある夢洲は、大阪市の最西端にある人工島である。もともとは一般・産業廃棄物や建設残土などの処分場として埋め立てが行われてきた。

 面積は約390ヘクタール(甲子園球場約100個分)。広大な用地確保が可能な夢洲は、1980年代に臨海部開発の一大拠点として位置づけられた。だが、バブル経済の崩壊と大阪府の財政悪化により計画は頓挫。その後も開発計画が浮かんでは消えてきた。

 この夢洲地区へのカジノ誘致をぶち上げたのが、当時大阪府知事だった橋下徹である。以来、カジノ・IR誘致は「維新の会」の看板政策となった。夢洲を万博会場に選んだのもカジノのためだ。万博開催を大義名分とすることで、博打場のインフラ整備に巨額の税金を注ぎ込むことを正当化しようとしたのである。

 今年4月、大阪府・市のIR整備計画は政府に認定された。大阪市は年内にも、事業者のMGMリゾーツ・インターナショナル(米国)とオリックスを中核とした「大阪IR株式会社」と夢洲の市有地の賃貸契約を結び、年約25億円で35年間貸す方針だ。

 だがIRの賃料をめぐり、官製談合による「大幅値引き」疑惑が浮上している。カジノ業者を優遇するために、大阪市が賃料を不当に安く抑えたというのだ。

「IR考慮外」を指示

 大阪市は2019年8月、IR用地の価格を算定するため4社に不動産鑑定を依頼した。すると3社が同じ鑑定価格を提示した。月額賃料、更地価格、利回りまで一致していた。常識では考えられない話である。

 そもそも、1uあたり12万円という土地の評価額は周辺の相場と比べて安すぎる。同じ此花区内のテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」に隣接するホテルの地価は50万円〜60万円。去年3月に売却された大阪南港東の埋め立て地でも約46万円だ。どうしてこうなったのか。

 からくりがある。IR予定地にはホテルや国際会議場などが建設される見込みなのに、不動産鑑定業者はホテルよりも評価額が低い大規模商業施設が建つ想定で鑑定を行っていた。「IR計画を考慮外」としたのは、大阪市の指示によるものだった。

 不審な点はまだある。大阪市が鑑定業者に依頼するよりも前に、鑑定結果を根拠に決めたはずの賃料「年約25億円」などが市の幹部から松井一郎市長(当時)に報告されていたのである。市が設定した金額に合わせるように業者を誘導したとしか思えない。

 こうした安値誘導は、適正な貸し付けを義務づけた地方自治法237条2項に違反する行為である。「値引き」の総額は35年の事業期間で500億円を超える。それほどカジノ業者に逃げられたくなかったのだろうが、市民に対する背信行為というほかない。


嘘がバレても嘘

 IR用地をめぐる賃料の鑑定をめぐり、存在を否定されていた公文書が先日開示された(7/14)。公開されたのは、大阪市が鑑定業者らとやりとりしたメール198通と添付資料。大阪府と市でつくる大阪港湾局は、市議会や情報公開請求に対し、そうした文書は存在しないと説明していた。

 鑑定評価額をめぐる疑惑を一早く報道していた「しんぶん赤旗 日曜版」が大阪市に情報公開請求を行ったのは昨年11月のこと。その直後に担当職員の判断で当該のメールがサーバーから削除されたため、請求に対して「該当文書は存在しない」と回答してしまったと、港湾局は弁明する。

 いやいや、そんな偶然はありえないでしょ。情報公開請求を受け、都合の悪い公文書の隠蔽を図ったとみるのが自然である。しかも、「存在しない」はずのメールは外付けのハードディスクに残っており、そのことは今年3月中旬の段階で港湾局の担当課長らに職員から報告されていた。

 不正の証拠を隠蔽し、バレそうになっても公表を統一地方選の後まで先送りにする―。維新に支配された大阪の行政組織は骨の髄まで腐ってしまった。数々の疑惑を突きつけられてなお、大阪市の横山英幸市長は「正当な手続きの中で決めた」と強弁し、賃料を見直す考えはないとした。

 こんな連中の独裁を許していたら、大阪は万博・カジノに血税を注ぎ込んだ挙句、沈没する。市民の力で止めねばならない。(M)
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