2023年08月18日 1785号

【1785号主張 地域の怒りを自治体意見書に/健康保険証廃止撤回は可能だ】

右往左往の岸田政権

 8月4日、岸田首相は、相次ぐトラブルにもかかわらず健康保険証の来秋廃止方針は維持し、マイナ保険証≠持たない人全員に最長5年間有効な資格確認書を交付すると表明した。

 有効期限延長と言うが、実際は発行機関任せで国民健康保険証は1〜2年、後期高齢者医療では1年と現在と変わりない。しかも、7月現在でマイナ保険証登録は全人口の52%に過ぎず、数千万人の資格確認書が必要となる。発行にかかる事務と経費は膨大で、被用者保険だけで約240億円(山井和則衆院議員事務所)との試算もある。現行保険証を残せばいいだけだ。

 一方、マイナ総点検と修正作業を見定めた上で「廃止時期の見直しも含め適切に対応」と述べざるを得なかった。現行保険証に不自由はなく、76%が廃止には「撤回か延期」(共同通信7/14〜7/16)という世論に押されたものだ。廃止方針は直ちに撤回するしかない。

資本の儲け口確保に固執

 なぜ、ここまで保険証廃止に固執するのか。

 マイナンバーカード所持を強制し、官民一体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)で資本の儲け口を確保し、戦争国家を造るためだ。岸田首相は「スマホひとつであらゆる公的・民間サービスを利用できる社会へ2年間で一気呵成(かせい)に進める」(1/23施政方針演説)とする。そのため、医療・介護・教育等これまで公的責任の下で担われてきたサービスを企業が担い儲け口とする仕組みを、「デジタル田園都市国家構想」で築こうとしている。そのカギが「デジタル社会のパスポート」と位置付けるマイナンバーカードなのだ。

 健康保険証や運転免許証、銀行口座などあらゆる情報を紐づけして個人情報をグローバル資本の儲けのために活用し、同時に人権も生活も軽視して市民監視と一体で大軍拡を進める戦争国家のためだ。

岸田退陣・政策転換へ

 保険証廃止問題は岸田政権のアキレス腱といってよい。日経・テレビ東京世論調査(7/29〜7/30)では内閣不支持が51%を占めた。自民党内でも参院幹事長や政調会長から延期論が出てきた。廃止を阻むことは可能だ。

 自治体からも岩手県議会など保険証廃止反対意見書が採択されつつある。信濃毎日新聞調査(7/26)では、長野県内77市町村中「延期」が21、「撤回」も2あった。

 市民の怒りは、自治体を突き動かし始めている。地域から民主主義を取り戻すときだ。自治体へ「市民をまもる地方自治の責務を果たせ」「健康保険証廃止の中止を求めよ」と要請を行おう。自治体議会意見書運動をおこそう。

 命と生活を守るために、保険証廃止反対と岸田政権退陣の声を広げ、政策転換への突破口を切りひらこう。

    (8月6日)
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