2023年08月18日 1785号

【未来への責任(380) 強制動員 闘いはこれからだ】

 7月30日、2023ZENKO戦後補償分科会「日韓『政治決着』では終わらない!―強制動員問題解決、植民地主義清算に向けてたたかいは続く―」に参加した。

 2018年10月30日の韓国・大法院判決から間もなく5年が経過しようとしているが、日鉄をはじめ損害賠償を命じられた日本企業は未だに判決を無視し続けている。

 3月6日に韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権が、日帝強制動員被害者支援財団を通じて判決の確定した原告らに対して解決金及び遅延利息を支払う「第三者弁済」による「解決策」を発表し、15人の原告(生存者及び遺族)のうち11人がこれを受け取った。日本ではあたかもこれで一件落着≠ナあるかのような報道があふれている。しかし、「被害国が加害者に代わって被害者にお金を支払う」ことが本当に「解決」と言えるのだろうか。

 メインゲストの張完翼(チャンワニク)弁護士は「『解決策』以降の葛藤状況について」と題して、韓国政府の「解決策」の実態を報告してくれた。それまで、被害者に対し、「誠意をもって理解を得る」としていた外交部と支援財団が7月3日に突然、財団からのお金の受け取りを拒否している生存者2人を含む4人の原告に対して供託をすると発表した。被害者の加害企業に対する債権を法的に処理してしまうことが目的だ。

 ところが、供託申請を受けた複数の地方法院が、原告たちが財団からの解決金を受け取ることを拒否しているという理由で供託を受理しなかった。これに対する財団の異議申立ても理由なしとされた。原告らは外交部の「解決策」が明らかになった3月、すでに被害者支援財団と日本企業に「大法院で確定した強制動員慰謝料債権と関連して第三者の弁済を認容しない」という意志を内容証明で送っていた。供託官はこれを尊重して受理しなかったのである。

 また、水原(スウォン)地方法院安山(アンサン)支院は「供託書に債務者(日鉄等)の同意を得たことを疎明する書類が添付されていない」と指摘した。そもそも加害企業は大法院判決そのものを認めていないのであるから、「第三者弁済」に同意を与えるはずがなく、「第三者弁済」そのものの成立に疑問が投げかけられている。張完翼弁護士は「『解決策』である第三者弁済が失敗した」と断じた。

 張弁護士の報告を受けて、民族問題研究所対外チーム長の金英丸(キムヨンファン)さんは「安倍、菅、岸田が終わっても企業は残る。不二越に至ってはまだ大法院判決も出ていない。『第三者弁済』で責任逃れができると考えるのは幻想だ。大法院判決を履行することが解決の最短の道だ」と強調した。

 闘いはこれからだ≠ニの思いを強くした。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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